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2012年3月19日 (月)

中原中也が訳したランボー「四行詩」Quatrainその2

「四行詩」Quatrainは

L’étoile星
L’infini無限(永遠)
La mer海
Et l’Homme (そして)人(男)

――を行頭に主語として置いていますから
星は、
無限は、
海は、
人(男)は、
――と訳せば、
逐語的な訳になり
中原中也もそうしていますが
ここを意訳して原作に近づこうとする訳者もあって
人それぞれの個性的な訳ができあがります。

ベルレーヌの案内――

○彼は決して平板な韻は踏まなかつた。
○しつかりした構へ、時には凝つてさへゐる詩。
○気儘な句読は稀であり、句の跨り一層稀である。

――を思い起こしたり
「見者の詩論」と突き合わせたりして
この「四行詩」もそのように作られているものと
目を凝らして読み返すのが習いになり
ランボー作品の中で最も短いこの詩の各行を
原作に当たってまでして
何度も何度も口ずさんでみることになります。

L’étoile a pleuré rose au cœur de tes oreilles,
L’infini roulé blanc de ta nuque à tes reins,
La mer a perlé rousse à tes mammes vermeilles
Et l’Homme saigné noir à ton flanc souverain.

これを
中原中也の同時代訳である
西条八十訳で読んでみると――

星は君が耳のさなかに薔薇色に泣き、
無限は君が項(うなじ)より腰へと白くまろびぬ。
海は、君があかき乳房に鳶色(とびいろ)の真珠をちりばめ
かくて、男は君がこよなき脇腹に黒き血を流しぬ。
(中央公論社「アルチュール・ランボー研究」より)

――となります。

西条八十訳の「四行詩」は
昭和5年発行の「世界文学全集」の
第37巻「近代詩人集」(新潮社)に収録されていますから
中原中也は読む可能性の中にありましたが
読んだか否かは分かりません。

短い詩なので
同時代訳だけではなく
他の訳と比べて読めるチャンスでもありますから
少し脱線してみますと――。

金子光晴の訳は――

 四行詩

 星は、君の耳殻に墜(お)ちて、薔薇色(ばらいろ)にすすり泣き
君の頸(くび)すじから、腰のあたりへ、無限がその白さをころがした。
君のあたたかい乳房は、あこや珠に照りはえてゆらめき、
男は、その妙なる横腹に、黒い血を流した。
(角川文庫「イリュミナシオン アルチュール・ランボオ」より)

――となります。

堀口大学の訳は――

 四行詩
   別題 ヴィナス生誕

星泣きぬ、ばら色に、汝(な)が耳の、奥の奥。
無窮まろびぬ白妙(しろたえ)に、汝(な)が首(うなじ)より臀(いしき)かけ。
朱真珠(あけまだま)海の置けるよ、茜(あかね)さす汝(な)が胸に、
かくてこそ男たち、黒々と血をしたたらす、たぐいなき汝(な)がわき腹に。
                                Quatrain

――となります。

(つづく)

 *

 四行詩

星は汝が耳の核心に薔薇色に涕き、

無限は汝(な)が頸(うなじ)より腰にかけてぞ真白に巡る、

海は朱(あけ)き汝(なれ)が乳房を褐色(かちいろ)の真珠とはなし、

して人は黒き血ながす至高の汝(なれ)が脇腹の上……

(講談社文芸文庫「中原中也全訳詩集」より)
※ルビは原作にあるもののみを( )の中に入れました。編者。

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