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2012年4月20日 (金)

中原中也が訳したランボー「永遠」Éternitéその3

Éternitéの、
第1連と最終連は
同一詩句の繰り返し=ルフランですが
これがどのように訳されているか
この4行だけを
色々な訳で
手あたり次第
読んでみることにしましょう。

「地獄の季節」の訳があるものは
あわせてそれも掲載します。

まずは
昭和5年に、
小林秀雄が「地獄の季節」を翻訳した中の
引用詩、

また見付かつた、
驚かしなさんな、永遠だ、
海と溶け合う太陽だ。

(アルチュル・ランボオ「地獄の季節」白水社)
※これは「新編中原中也全集」からの孫引きです。)

同じ小林秀雄が
戦後の、昭和23年に出した「ランボオ詩集」(創元社)の中で訳した
「地獄の季節」の引用詩、

また見付かつた、
何が、永遠が、
海と溶け合う太陽が。

堀口大学
「永遠」

もう一度探し出したぞ。
何を? 永遠を。
それは、太陽と番(つが)った
海だ。

(「ランボー詩集」昭和26年発行、平成23年88刷、新潮文庫)

金子光晴
「永遠」

 とうとう見つかったよ。
なにがさ? 永遠というもの。
没陽といっしょに、
去(い)ってしまった海のことだ。

「イリュミナシオン」昭和26年初版、平成11年改訂初版、角川文庫)

西条八十
「永遠」

また見つかったぞ。
何が? ――永遠が。
それは太陽と共に
去って行った海。

(「アルチュール・ランボー研究」昭和42年初版、中央公論社)

寺田透
「ある地獄の季節」

見つかった。
何が。永遠が。
太陽に溶け込んだ
  海なのだ。

(「世界名詩集15 ランボー ある地獄の季節ほか」昭和44年初版、平凡社)

粟津則雄
「永遠」

見つかったぞ。
何がだ!――‘永遠’。
太陽と手をとりあって
行った海。

※ ‘永遠’は、原作では傍点になっています。編者。

粟津則雄
「地獄の季節」

見つかったぞ!
何がだ? 永遠。
太陽にとろけた
  海。

(「ランボオ全作品集」1965年初版、思潮社)

清岡卓行
「永遠」

あれがまた見つかった。
なにが? ‘永遠’が。
それはいっしょに消えた海
太陽と。

※ ‘永遠’は、原作では傍点になっています。編者。

(「新篇 ランボー詩集」1992年初版、河出書房新社)

鈴木創士
「永遠」

また見つかった。
何が?――永遠。
太陽とともに
行った海だ。

「ある地獄の季節」

また見つかった!
何が? 永遠。
太陽に混じった
  海だ。

(「ランボー全詩集」2010年初版、河出書房新社)

宇佐美斉
「永遠」

あれが見つかった
何が――永遠
太陽と共に去った
海のことさ

「地獄の季節」

あれが見つかった
何が? 永遠
太陽と溶けあった
  海のことさ

(「ランボー全詩集」1996年第1刷、筑摩書房)

鈴村和成
「永遠」

また見つかったよ。
何がさ?――《永遠》。
太陽といっしょに
行ってしまった海さ

「地獄の季節」

また見つかったよ!
何がさ? 永遠。
 太陽に
とろける海さ。

(「ランボー全集 個人新訳」2011年、みすず書房)

今、手元にあるのはこれだけですが
日本語訳されて
印刷物になった「有名な」翻訳は
以上のざっと3倍は存在するはずです。

これだけ読むと
それぞれの差異よりも
ランボーの原作が
どしんと存在していることが
実感されようというものですが
いかがでしょうか――。

中原中也の訳の存在感も
なかなかのものであることが
伝わってきます。

 *

 永遠

また見付かつた。
何がだ? 永遠。
去(い)つてしまつた海のことさあ
太陽もろとも去(い)つてしまつた。

見張番の魂よ、
白状しようぜ
空無な夜(よ)に就き
燃ゆる日に就き。

人間共の配慮から、
世間共通(ならし)の逆上(のぼせ)から、
おまへはさつさと手を切つて
飛んでゆくべし……

もとより希望があるものか、
願ひの条(すぢ)があるものか
黙つて黙つて勘忍して……
苦痛なんざあ覚悟の前。

繻子の肌した深紅の燠よ、
それそのおまへと燃えてゐれあ
義務(つとめ)はすむといふものだ
やれやれといふ暇もなく。

また見付かつた。
何がだ? 永遠。
去(い)つてしまつた海のことさあ
太陽もろとも去(い)つてしまつた。

(講談社文芸文庫「中原中也全訳詩集」より)
※ルビは原作にあるもののみを( )の中に入れました。編者。

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