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2012年4月19日 (木)

中原中也が訳したランボー「永遠」Éternitéその2

「永遠」と訳されることの多い原典Éternitéは、
ランボー自筆の原稿が2種類残されています。

一つはメッサン版に収録されているファクシミレで、
これには末尾に「1972年5月」と記されています。
一つは第2次ベリション版が踏襲しているラ・ヴォーグ版の元原稿で、
中原中也はこれを訳しています。

Éternitéには
この他に
「地獄の季節」中の「言葉の錬金術」に
引用されたバリアントがあります。

自筆原稿(メッサン版とラ・ヴォーグ版)は、
第4、第5連に多くの異同があり、
この自筆原稿と「地獄の季節」中に引用されたテキストには
第1連と最終連の最終行、
つまり、ルフランの部分に
意味深長な変化があることが分かっています。

この変化は
1872年から1873年に起ったものと見られており
ランボーがこの時期に盛んに行っていた
「新しい詩」への試みといわれるものの一つです。

原典では
la mer allée avec le soleil 太陽とともに去った海

が、

la mer mêlée au soleil 太陽と溶け合った海

――になったという変化です。

専門的な話になりますが
ここのところを
「新編中原中也全集 第3巻 翻訳・解題篇」では

前者をごく素直に写実的な光景として読み取ろうとすれば、水平線に垂直の軌跡を描いて没し去ろうとする落日のイメージである他はない。しかし後者の場合、永遠をかたどるイメージを落日と断定する根拠は何もないと言わざるを得ない。海から昇る朝日でもあり得るわけであるが、それよりもむしろ、そのような時間性を超越した「永遠の光芒」にこそ照準を合わせたものと理解しなければならないだろう。

――と解説しています。

そういえば
記憶に間違いがなければの話ですが
映画「気狂いピエロ」のエンディングは
ジャン・ポール・ベルモンド扮する主人公が
落日を背景にして爆死してしまうシーンに仕立てていたことが想起されます。

この映画が公開されたのは1965年のことですから
ランボー研究が
このときより深化を遂げたということを示す一例かもしれません。

単独の詩としての「Éternité」は
「地獄の季節」に引用された詩が決定稿となったのだとすれば
決定稿のほうが上等で優秀な詩である、ということではありませんが、
この変化を知って読めば
いっそうÉternitéに近づくことにはなることでしょう。

この詩を書いたころ

さば雲もろとも融けること(「渇の喜劇」)

――と中原中也が訳したランボーが
いまだ近くにいるのですが
やがては
「地獄の季節」を書き、
小林秀雄の言うような
「文学との決別」が予定されているようなランボーとは
異なる旅を続けるランボーが見えはじめますが……。

 *

 永遠

また見付かつた。
何がだ? 永遠。
去(い)つてしまつた海のことさあ
太陽もろとも去(い)つてしまつた。

見張番の魂よ、
白状しようぜ
空無な夜(よ)に就き
燃ゆる日に就き。

人間共の配慮から、
世間共通(ならし)の逆上(のぼせ)から、
おまへはさつさと手を切つて
飛んでゆくべし……

もとより希望があるものか、
願ひの条(すぢ)があるものか
黙つて黙つて勘忍して……
苦痛なんざあ覚悟の前。

繻子の肌した深紅の燠よ、
それそのおまへと燃えてゐれあ
義務(つとめ)はすむといふものだ
やれやれといふ暇もなく。

また見付かつた。
何がだ? 永遠。
去(い)つてしまつた海のことさあ
太陽もろとも去(い)つてしまつた。

(講談社文芸文庫「中原中也全訳詩集」より)
※ルビは原作にあるもののみを( )の中に入れました。編者。

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