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2012年5月 3日 (木)

中原中也が訳したランボー「幸福」Bonheurその6

「幸福」Bonheurの翻訳で
最近のものをもう少し読んでおきます。

鈴木創士訳

 〔おお、季節よ、おお、城よ…〕

おお、季節よ、おお、城よ
無疵な魂がどこにある?

俺は魔術的な研究を行った
誰ひとり避けられない「幸福」について。

おお、幸福、万歳、
ガリアの雄鶏が鳴くたびに。

しかし! 俺はもう欲しがったりはしないだろう、
幸福が俺の人生を引き受けた。

この「魔力」! そいつが身も心も奪い、
あらゆる努力を蹴散らした。

俺の言葉を聞いて何を理解する?
幸福のせいで、言葉は逃げて、飛んでいく!

おお、季節よ、おお、城よ!

〔そして、もし不幸が俺を引きずるなら、
俺がその不興を買うのは間違いない。

その軽蔑は、ああ!
できるだけ早く俺を死にゆだねるべきなのだ!

――おお、季節よ、おお、城よ!〕

宇佐美斉訳

 〔おお 季節よ 城よ……〕

おお 季節よ 城よ
無疵な魂などどこにいよう

おお 季節よ 城よ

‘幸福’についてぼくは魔法の探究を行った
そいつは誰にも逃れられない

おお 幸福に万歳を言おう
あいつのガリアの雄鶏が歌うたびに

それにしても もはや欲しがりはすまい
あいつがぼくの生を引き受けたのだ

この‘魅惑’ こいつに身も魂も捉えられては
努力もみんなふっ飛んだ

ぼくのことばにどんな意味があるというのか
幸福のせいでことばはどっかへ飛んで逃げた

おお 季節よ 城よ

〔さて ぼくが不幸に引きずられるのなら
あいつの不興を買うのは必定(ひつじょう)だ

あいつの侮蔑を浴びるのなら ああ
すみやかにいまわの際(きわ)に導くがいい

おお 季節よ 城よ
――無疵な魂などどこにいよう〕 

※‘幸福’‘魅惑’は、原作では傍点になっています。編者。

鈴村和成訳

 〔季節よ、城よ、……〕

季節よ、城よ、
無傷なこころがどこにある?

季節よ、城よ!

逃れられない、《幸福》の
魔法を僕は研鑽した。

ゴールの鶏が鳴くたびに、
幸福には万歳だ。

そうさ! もう僕はなんにも欲しくない、
そいつが僕の人生を引き受けた。

この《魅惑》! 身もたましいも奪い去り、
努力なんかちりぢりさ。

僕の言葉のなにが分かる?
言葉なんか逃げて飛んでけ!

季節よ、城よ!

以下は、中原中也訳です。

 *

 幸福

  季節(とき)が流れる、城寨(おしろ)が見える、
  無疵な魂(もの)なぞ何処にあらう?

  季節(とき)が流れる、城寨(おしろ)が見える、

私の手がけた幸福の
秘法を誰が脱(のが)れ得よう。

ゴオルの鶏(とり)が鳴くたびに、
「幸福」こそは万歳だ。

もはや何にも希ふまい、
私はそいつで一杯だ。

身も魂も恍惚(とろ)けては、
努力もへちまもあるものか。

  季節(とき)が流れる、城寨(おしろ)が見える。

私が何を言つてるのかつて?
言葉なんぞはふつ飛んぢまへだ!

  季節(とき)が流れる、城寨(おしろ)が見える!

(講談社文芸文庫「中原中也全訳詩集」より)
※ルビは原作にあるもののみを( )の中に入れました。編者。

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