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2012年6月12日 (火)

中原中也が訳したランボー「タルチュッフの懲罰」Le châtiment de Tartufe

Le châtiment de Tartufeは
ランボー詩によく現れる
聖職者批判の詩の一つですが
この詩は特に激越な調子があります。

中原中也訳は「タルチュッフの懲罰」。
原詩のソネット(定型・韻律)を
どのようにさばいたでしょうか――。

タルチュッフは
モリエールの喜劇の主人公。
偽善者、エセ信者として広く知られています。

まずは
現代表記し
読み替え・意訳なども加えて
読み下してみましょう。

ワクワクと、彼の心は、恋焦がれ
僧服の中で、幸福を感じ、手袋をはめて、
出かけました、ある日のこと、たいへんやさしそうな
黄色い顔で、歯の欠けた口から、信心のよだれをたらしてネ。

彼は出かけました、ある日のことです、「オムレス! 共に祈らん!」なんちゃって。
とある意地悪なヤツがいて、祝福された彼の耳ねっこを手荒に掴んで
酷い文句を彼にぶっつけました、僧服を
ジメジメした彼の肌から引っ剥がしながらネ。

いい気味だ! ……僧服の、ボタンはすでに外されちゃいました、
多くの罪を許してくれた、その長ーい大きな数珠をたのんで、
心の中でジャリジャリ揉んで、聖タルチュフは真っ青でした。

ところで彼は告解してた、お祈りしてた、あえぎながらも。
例の男は嬉々として、獲物をさらっていきました。
――ふつふつふつ! タルチュフ様は素っ裸。
                1870年7月

似たようなのを
どこかで読んだ覚えがあるので
振り返ってみれば
「蹲踞」に行き当たりました。

聖職者を揶揄し、罵倒した
同じ系列の詩といってよいでしょう。

タルチュフ殿は
最後には
虚飾のすべてを剥ぎ取られ
丸裸にされてしまいます。

 *

 タルチュッフの懲罰

わくわくしながら、彼の心は、恋慕に燃えて
僧服の下で、幸福おぼえ、手袋はめて、
彼は出掛けた、或日のことに、いとやさしげな
黄色い顔して、歯欠けの口から、信心垂らし

彼は出掛けた、或日のことに――《共に祈らん(オレムス)》――
と或る意地悪、祝福された、彼の耳をば手荒に掴み
極悪の、文句を彼に、叩き付けた、僧服を
じめじめの彼の肌から引ツ剥ぎながら。

いい気味だ!……僧服の、釦は既に外(はづ)されてゐた、
多くの罪過を赦してくれた、その長々しい念珠をば
心の裡にて爪繰りながら、聖タルチュッフは真(ま)ツ蒼(さを)になつた。

ところで彼は告解してゐた、お祈りしてゐた、喘ぎながらも。
件の男は嬉々として、獲物を拉つてゆきました。
――フツフツフツ! タルチュッフ様は丸裸か。
                     〔一八七〇、七月〕

(講談社文芸文庫「中原中也全訳詩集」より)
※ルビは原作にあるもののみを( )の中に入れ、新漢字を使用しました。編者。

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