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2012年9月 4日 (火)

「中原中也が訳したランボー」のおわりに・その3

中原中也訳「ランボオ詩集」の
内容への評判はどうだったかを見ておきましょう。
こちらも、

春山行夫の書評(「新潮」昭和12年11月号)のような否定的なものもあったが、小林秀雄が「文学界」11月号で書評し、概して好評で、よく売れたらしい。その翻訳は今日の眼から見れば満足なものではない。春山の批判はその頃出始めたランボー=シュルレアリスト説に立つもので、「詩人の手になったものとは到底想像もつかない」と書いたが、そう書いた人間は詩人の手になったものとは想像もつかない詩を書いていた。

――と、大岡昇平が記したように、否定的な批評も存在しました。

否定的な批評は
「ランボオ詩集」に特定すれば
そう目立ったものではありませんでしたが
「ランボオ詩集」が発行される前から
「山羊の歌」の詩人への「否定の文脈」という流れがあり
その一部を形成するのが金子光晴でした。

そこのところを、
北川透が「ユリイカ」の「中原中也特集」(2000年6月号)で
少しばかり触れているところを読んでみれば……。

最初に『山羊の歌』を一刀両断に切り捨てたのは、金子光晴の「文芸時評」(『日本詩』昭和10年4月号)だった。まず、『山羊の歌』の装丁を立派だとした上で、ほめようと思えばいくらでもほめられるが、それだけのことで、《からみついてこない》し、知らん顔で素通りも出来る、《アマチュアクラブの詩人にすぎないこんなふうな詩人が、いか
に純粋づらして横行することよ》と書いている。具体的なことは何も言わないのだから、これは悪口に近いが、自分たちに《からみついてこない》というのは、左翼的な立場の詩人が共通にもっていた印象だろう。

――とあります。

金子光晴が属していた潮流などというものがあったかどうか
金子光晴を左翼的な立場の詩人とみなしているようですが
プロレタリア系の詩人の潮流なら
詩壇を二分するほどの勢力でしたから
金子のような考えがその詩人たちの共通の考えであるとすれば
中原中也がいかに居心地が悪かったかを
想像することができようというものです。

「否定の文脈」のもう一つの流れとして
北川透があげるのがモダニズムの春山行夫の発言です。
モダニズムといえば
プロレタリア系とともに詩壇の一大勢力です。

そのモダニズムの論客でもあった詩人である春山行夫の発言を
北川透は大岡昇平とは異なる角度で
やや詳しく取り上げたうえで批判していますから、
これを読んでおきますと……。

中也の詩集ではないが、ランボー翻訳について、春山行夫が《一読してランボオもひどいことになつた》と慨嘆していることはよく知られていることだろう。それは「中原中也訳『ランボオ詩集』」(「新潮」昭和12年12月号)という文章だが、さきの慨嘆に続けて《中原氏の訳だが、文語と口語、雅語と俗語、全くの無秩序で、これがいやしくも詩人の手になつたものとは到底想像もつかない。訳詩の困難なことは重々承知はしてゐるが、これでは全くの下書き、すくなくともランボオの「コップのように美しい」イメジなど、まるで浮びようもない》と述べている。

これはモダニズムの側からのほとんど嘲笑に近いことばだが、しかし、春山の尊大な批判は少しも自明ではない。翻訳の質自体をとってみても、今日では、小林との共同翻訳の性質が明らかになってきているし、決して軽んじられるべきものではない。

また、戦前の詩のレベルにおいて、文語と口語、雅語と俗語が混在することは、混在しないことに対して、先験的な優位を少しも保証するものではない。

――などとあります。
(※「行アキ」を加えてあります。編者。)

金子光晴にしても春山行夫にしても、
北川透の記すように
「悪意」や「嘲笑」に近い発言ですし、
80年近い歳月を経た現在読み返してみて
ピントが外れていることは明きらかです。

「ランボオ詩集」を批判した春山行夫については、
「文語と口語、雅語と俗語、全くの無秩序」と指摘しているところに
中原中也訳の魅力の一つはあり、
「コップのように美しい」イメージを破壊してしまうところに
ランボー詩の魅力の一つがあるということは
今日の常識であることを言っておかなくてはなりません。

(つづく)

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