ひとくちメモ/中原中也の詩に現われる色の色々11
(前回からつづく)
「ノート小年時」は
昭和2年から同5年6月15日まで
中原中也が使用していたと推定されているノートで
16篇の詩が記されてあります。
鉛筆で「小年時」とノートの表紙に書かれていることから
角川全集編集者が呼び習わしたものです。
アルチュール・ランボーの散文詩「少年時」に因(ちな)んで
ネーミングしたことがあきらかですが
中原中也は「少年時」というタイトルの詩を二つ書いたり
「山羊の歌」の第2章の章題とするなど
少年(小年)時代への強いテーマ意識(愛着)を持っていたことが知られています。
◇
未発表詩篇「ノート小年時」に現われる「色」を
ピックアップしてみましょう。
「冷酷の歌」
恰度紫の朝顔の花かなんぞのように、
人は思いだすだろう、その白けた面の上に
「倦怠」
この真っ白い光は、
「夏は青い空に……」
夏は青い空に、白い雲を浮ばせ、
青空は、白い雲を呼ぶ。
白き雲、汝(な)が胸の上を流れもゆけば、
「木陰」
夏の昼の青々した木陰は
「夏の海」
浪は金色、打寄する。
「追懐」
私は此処にいます、黄色い灯影に、
「夏と私」
真ッ白い嘆かいのうちに、
真ッ白い嘆きを見たり。
◇
16篇のうちの3~4割が
後で推敲されて発表されていますから
「生前発表詩篇」の中の詩の異形態であり
見覚えのあるものが随分あります。
「色」という角度では
特に目立つものはありませんが
だからといって「ノート小年時」によい詩が少ないなどということを帰納できるものではなく
またその逆を言えるものでないことを
くれぐれもカン違いしないでください。
(つづく)
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