ひとくちメモ/中原中也の詩に現われる色の色々7
(前回からつづく)
中原中也は詩集「山羊の歌」「在りし日の歌」に発表した詩のほかに
文芸誌・詩誌や雑誌・新聞などのメディアに多くの詩を発表しました。
これを発表年月順にまとめたものが「生前発表詩篇」です。
短歌を除いた「生前発表詩篇」に現われる「色」を
続けて見ていきましょう。
◇
「夏と私」
真ッ白い嘆かいのうちに、
真ッっ白い嘆きを見たり。
「ピチベの哲学」
色蒼ざめたお姫様がいて……
「寒い!」
自動車の、タイヤの色も寒々と
鈍色(にびいろ)の空にあっけらかん。
「雨の降るのに」
顔はしらんで
あぶらぎり
「落日」
褐(かち)のかいなをふりまわし、ふりまわし、
「倦怠」
倦怠の谷間に落つる
この真ッ白い光は
「夏の明方年長妓が歌った」
空が白んだ、夏の暁(あけ)だよ
「夢」
黒い 浪間に 小児と 母の、
白い 腕(かいな)の 踠(もが)けるを 見た。
「秋を呼ぶ雨」
窓が白む頃、鶏の声はそのどしゃぶりの中に起ったのです。
その煙突は白く、太くって、傾いていて、
墓石のように灰色に、雨をいくらでも吸うその石のように、
「漂々と口笛吹いて」
褐色(かちいろ)の 海賊帽子 ひょろひょろの
野分(のわき)の 色の 冬が 来るのサ
「郵便局」
手をお医者さんの手のようにまで、浅い白い洗面器で洗い、
「幻想」
空は晴れ、大地はすっかり旧に復し、野はレモンの色に明(あか)っていた。
「かなしみ」
白き敷布のかなしさよ夏の朝明け、
何事もなくただ沈湎の一色に打続く僕の心は、悲しみ呆けというべきもの。
青い卵か僕の心、
真白き時計の文字板に、
悲しみばかりの藍の色、
「或る夜の幻想」(1・3)
かわたれどきの色をしていた
「道化の臨終」
清浄こよなき漆黒のもの、
暖(だん)を忘れぬ紺碧を……
紫色に 泣きまする。
「夏日静閑」
用務ありげな白服の紳士が乗っていた。
◇
40作品を一気に読んでしまいました。
「色」のことを忘れそうになるほど
面白い詩がわんさかあるのを改めて知りますが
ここでは「色」から目を離しません。
めぼしいものだけを拾っておきますと……。
真ッ白い嘆かい
真ッっ白い嘆き
褐(かち)のかいな
野分(のわき)の 色の 冬
野はレモンの色に
白き敷布のかなしさ
青い卵
悲しみばかりの藍の色
かわたれどきの色
紫色に 泣き
◇
時折、目が釘付けになる使い方があります。
(つづく)
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