ひとくちメモ/中原中也の詩に現われる色の色々8
(前回からつづく)
詩集「山羊の歌」「在りし日の歌」や「生前発表詩篇」は
詩人自らの意志で発表したものですが
どこにも発表されなかった完成作品や未完成作品を
一つにまとめたのが「未発表詩篇」というカテゴリーです。
「未発表詩篇」は
まず作品がどのような形で残されたか
ノートである場合や原稿用紙である場合などがありますが
それらの形によって分類され
そうした分類の中で制作日時順に整理されています。
もっとも古いものが「ダダ手帖」ですが
これは形としては残されていない形です。
戦争で消失してしまったノートの中の詩が
消失する前に論評され発表されていたために残った作品で
「タバコとマントの恋」「ダダ音楽の歌詞」という二つの詩があります。
ここに「色」は現われません。
◇
次は「ノート1924」というこれも京都で作られたダダ時代の作品ノートですが
なかなか「色」は現われません。
6番目の「自滅」に初めて
俺は灰色のステッキを呑んだ
――と登場します。
以下、
「倦怠に握られた男」
灰色の、セメント菓子を噛みながら
「想像力の悲歌」
赤ちゃけた
麦藁帽子をアミダにかぶり
「春の夕暮」
アンダースロウされた灰が蒼ざめて
ポトホトと蝋涙に野の中の伽藍は赤く
「幼き恋の回顧」
ソーセージが
紫色に腐れました――
(何と物酷いのです)
あの白ッ、黒い空の空――
あんなに空は白黒くとも
あんなに海は黒くとも
「旅」
青い紙ばかり欲しくて
それなのに唯物史観だった
「呪詛」
黒い着物と痩せた腕
「冬と孤独と」
黒い雪と火事の半鐘――
――と、ここまでが1924年(大正13年)に
京都で作られた純ダダ詩に現われる「色」ですが
現われる頻度はかなり小さいことが分かります。
あったとしても
ほぼ「写実の色」をひとひねりしたような単純な修辞の域
もしくは難解であるばかりの域などにとどまります。
中原中也のダダに
「色」は入り込みにくい何かがあったと言えるのでしょうか。
そんなこと言えないのでしょうか。
まったく偶然のことでしょうか。
◇
そうでありながら、
灰色の、セメント菓子
白ッ、黒い空の空
空は白黒く
青い紙
黒い雪
……などの快活で輪郭のはっきりした表現が続いています。
(つづく)
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