ひとくちメモ/中原中也の詩に現われる色の色々6
(前回からつづく)
「在りし日の歌」に現われる
「色」のピックアップを進めましょう。
姉らしき色
金の風、銀の鈴
青き女(おみな)
厳めしい紺青(こあお)
桜色の 女が通る
……などにコメントしたくなりますが
先に進めましょう。
「白血球」は色か? などと
ささいな疑問にひっかかり
これを色に分類しないのは
「青空」は色とし「赤ん坊」は色としないことにするのと同じです。
2013年の今日(1月18日)
関東地方南部は「厳めしい紺青(こあお)」の空が広がり
遅い目覚めの床を襲いました。
大寒(1月20日)の前というのに
春の陽射しです。
◇
「冬の日の記憶」
北風は往還を白くしていた。
「冷たい夜」
心は錆びて、紫色している。
「冬の明け方」
やがて薄日が射し
青空が開(あ)く。
「秋の消息」
けざやけき顥気の底に青空は
「骨」
しらじらと雨に洗われ
ただいたずらにしらじらと
骨はしらじらととんがっている。
「秋日狂乱」
空の青も涙にうるんでいる
「朝鮮女」
肌赤銅の乾物(ひもの)にて
「夏の夜に覚めてみた夢」
ユニホームばかりほのかに白く――
蒼々として葉をひるがえし
「春と赤ン坊」
薄桃色の、風を切って……
走ってゆくのは菜の花畑や空の白雲(しろくも)
「雲雀」
碧(あーお)い 碧(あーお)い空の中
あーおい あーおい空の中
「初夏の夜」
大河(おおかわ)の、その鉄橋の上方に、空はぼんやりと石盤色であるのです。
「閑寂」
土は薔薇色、空には雲雀
「思い出」
お天気の日の、海の沖は
まるで、金や、銀ではないか
煉瓦干されて赫々していた
「残暑」
畳ももはや 黄色くなったと
「曇天」
黒い 旗が はためくを 見た。
いまも 渝(かわ)らぬ かの 黒旗よ。
「蜻蛉に寄す」
赤い蜻蛉が 飛んでいる
「ゆきてかえらぬ」
ポストは終日赫々(あかあか)と、
風信機(かざみ)の上の空の色、時々見るのが仕事であった。
さてその空には銀色に、蜘蛛(くも)の巣が光り輝いていた。
「言葉なき歌」
とおくとおく いつまでも茜の空にたなびいていた
「月の光 その二」
とても黒々しています
「村の時計」
おとなしい色をしていた
「或る男の肖像」
齢(とし)をとっても髪に緑の油をつけてた。
――幻滅は鋼(はがね)のいろ。
髪毛の艶(つや)と、ランプの金との夕まぐれ
「正午」
大きなビルの真ッ黒い、小ッちゃな小ッちゃな出入口
◇
「光」の表現と「色」が
微妙に絡(から)まっていて
分別するのが難しいのですが
文字・言葉として形にされたかどうかで一線を引きました。
線を引けない表現もあります。
(つづく)
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