ひとくちメモ・鳥が飛ぶ虫が鳴く・中原中也の詩9・まとめらしきこと
(前回からつづく)
「草稿詩篇(1931年―1932年)」13篇
「ノート翻訳詩(1933年)」9篇
「草稿詩篇(1933年―1936年)」65篇を一気に読んでしまったので
ここですこし整理しておきましょう。
◇
この三つのカテゴリー(分類)を合わせた87篇中に
動物に関する表記が登場する詩は36篇ありました。
1篇の詩に複数回の表記があっても1篇という計算です。
87篇中の36篇ということはおよそ4割強です。
この中から
生物学的分類に入らない「幽霊」などを除き
野兎色、鹿皮、蝦蟇口、馬車のような
動物が「喩(ゆ)」として利用されている表記を除き
自然の状態に人間の手が加えられた状態の
「乾蚫(ほしあわび)」や「蛙焼蛤貝(やきはまぐり)などを除外すると、
黒猫
三毛猫
サイオウが馬
白馬
とんぼ
蛙
小馬
羊
梟(ふくろう)
虫
蝉(せみ)
かねぶん
象
蝉(せみ)
雀
鶏(にわとり)
涼虫(すずむし)
烏(からす)
蜂
馬
野羊(やぎ)
こうもり
犬
猫
コオロギ
駱駝(らくだ)
兎
――となります。
動物が動物として登場しているものだけを採集すると
27篇ということになります。
全体の3割強です。
「サイオウが馬」は単なる馬というより
固有名詞のような馬なので載せておきました。
※「サイオウが馬」は、人間万事塞翁が馬(じんかんばんじさいおうがうま)という故事熟語から取
ったものです。人間の幸不幸は予測ができない。幸が不幸に、不幸が幸にいつ転じてしまうかも
わからないものだから、安易に喜んだり悲しんだりしてはいけないという「喩=たとえ」です。
「黒猫」「三毛猫」の区別を排除し「馬」としたり
「白馬」「小馬」の区別を排除し「馬」としたりするのも
ここでは無意味になるようなので載せてあります。
◇
詩人が鳥獣虫魚や花鳥風月を詩の中に使うとき
それは思いつきではなく
「詩の言葉」として通用するか否か
熟考に熟考を重ねた結果の選択であることが見えてきます。
使えば強いインパクトを与えますし
詩の生命に関わりますから
生半可(なまはんか)には使っていないのです。
蛙のような動物は
究極のところ
中原中也という詩人そのもののメタファーにさえなるのですし
こうもりが幽霊のメタファーになるように
ほかの動物たちの幾つかにも
そのような重大な役割があります。
(つづく)
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