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2013年3月15日 (金)

ひとくちメモ・中原中也の詩に出てくる「人名・地名」12・まとめ6

(前回からつづく)

「地名」の解説を続けます。

日本以外の地名を拾ってみると、

【欧羅巴】(ヨーロッパ)
【ロシア】
【チャールストン】
【英国】(イギリス)
【独逸】(ドイツ)
【フランス】
【アメリカ】
【オランダ時計】
【朝鮮料理屋】
【ボヘミアン】
【ガリラヤ】
【マグデブルグ】
【マダガスカル】
【支那】
【ナイアガラ】
【エジプト煙草】
【ドレスデン製の磁器】
【ブルターニュ】
【羅馬】(ローマ)
【西洋】
【朝鮮人】
【中国】
【エジプト遺蹟】
【土耳古人】(ダッチ)
――となり、世界各地に「飛んでいる」のがわかります。

【チャールストン】【ボヘミアン】【ガリラヤ】【マグデブルグ】と見てきて
【マダガスカル】【ナイアガラ】【エジプト煙草】【ドレスデン製の磁器】【ブルターニュ】【エジプト遺蹟】
【土耳古人】(ダッチ)の中の【ブルターニュ】や【土耳古人(ダッチ)】にひっかかります。

【マダガスカル】【ナイアガラ】【エジプト(煙草)】はおおよその見当がつき
【ドレスデン】は【マグデブルグ】と同じドイツの地名ですから。

【ブルターニュ】はフランスの地域の名前です。なぜこの地名が出てきたのか。これが出てくる詩「幻想」にあたってみます。

幻 想
 
   1
何時(いつ)かまた郵便屋は来るでしょう。
街の蔭った、秋の日でしょう、

あなたはその手紙を読むでしょう
肩掛をかけて、読むでしょう

窓の外を通る未亡人達は、
あなたに不思議に見えるでしょう。

その女達に比べれば、
あなた自身はよっぽど幸福に思えるでしょう。

そして喜んで、あなたはあなたの悩みを悩むでしょう
人々はそのあなたを、すがすがしくは思うでしょう

けれどもそれにしても、あなたの傍(そば)の卓子(テーブル)の上にある
手套(てぶくろ)はその時、どんなに蒼ざめているでしょう

   2

乳母車を輓(ひ)け、
紙製の風車を附(つ)けろ、
郊外に出ろ、
墓参りをしろ。

   3

ブルターニュの町で、
秋のとある日、
窓硝子(まどガラス)はみんな割れた。

石畳(いしだたみ)は、乙女の目の底に
忘れた過去を偲(しの)んでいた、
ブルターニュの町に辞書はなかった。

   4

市場通いの手籠(てかご)が唄う
夕(ゆうべ)の日蔭の中にして、
歯槽膿漏(しそうのうろう)たのもしや、
 女はみんな瓜(うり)だなも。

瓜は腐りが早かろう、
そんなものならわしゃ嫌い、
歯槽膿漏さながらに
 女はみんな瓜だなも。

   5

雨降れ、
瓜の肌には冷たかろ。
空が曇って町曇り、
歴史が逆転はじめるだろ。

祖父(じい)さん祖母(ばあ)さんいた頃の、
影象レコード廻るだろ
肌は冷たく、目は大きく
相寄る魂いじらしく

オルガンのようになれよかし
愛嬌なんかはもうたくさん
胸掻き乱さず生きよかし
雨降れ、雨降れ、しめやかに。

   6

昨日は雨でしたが今日は晴れました。
女はばかに気取っていました。
  昨日悄気(しょげ)たの取返しに。

罪のないことです、
さも強そうに、産業館に這入(はい)ってゆきます、
  要らない品物一つ買うために。

僕は輪廻ししようと思ったのだが、
輪は僕が突き出す前に駆け出しました。
  好いお天気の朝でした。

なかなかの詩であることをまた発見します。

詩の中の、「ブルターニュ」が出てくるところを

ブルターニュの町で、秋のとある日、窓硝子(まどガラス)はみんな割れた。
石畳(いしだたみ)は、乙女の目の底に忘れた過去を偲(しの)んでいた、ブルターニュの町に辞書はなかった。
――と読み下してみると、
「ブルターニュの歴史」から詩人が引っ張り出そうとした何やら「剣呑(けんのん)な」「穏やかでない」イメージがぼんやりと伝わってくる気がします。そう読んでいいものか、断定できませんが、「ガラスが割れ、辞書がない」という詩語の持つイメージは、「歯槽膿漏(しそうのうろう)、瓜は腐り、雨降れ、冷たかろ、空が曇って町曇り、歴史が逆転、昨日悄気(しょげ)た」といった否定的イメージへ連なり、
詩の終わりの、

僕は輪廻ししようと思ったのだが、
輪は僕が突き出す前に駆け出しました。
  好いお天気の朝でした。
――へ繋(つな)がっていきます。

「輪廻し」をしようと思ったら「輪」が動き出してしまったというのは幼時体験か
取り残されたような感覚か
手に負いがたいことがあるというメタファーか
ついには遠い日の「酸っぱい」思い出へこの詩は収まっていきます。
【ブルターニュ】が、そこへ響き合っています。

【土耳古人(ダッチ)】の、「土耳古」は普通トルコと読むところを、「オランダ」の意味である「ダッチ」としたのは、勘違いか。中原流のひねりがあるのでしょうか。これも断定できることではありません。「さまよえるオランダ人」(ワグナー)の例もあり、想像するしかないところです。

今回はここまで。

(つづく)

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