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2013年4月16日 (火)

ひとくちメモ・中原中也の詩に出てくる「人名・地名」26・まとめ20

(前回からつづく)

中原中也の詩に現われる「人名」のうちの日本人を見てきて
残るのは、【泰子】【小林秀雄】【昇平】だけとなりました。

【小林秀雄】は新潮社から全集14巻(別巻2)が出ており
【(大岡)昇平】も筑摩書房から全23巻(別巻1)が出ている「大文学者」ですから
ここで述べることは控えておき、生没年だけを記憶しておきます。

小林秀雄は、1902年(明治35年)4月11日~1983年(昭和58年)3月1日、
大岡昇平は、1909年(明治42年)3月6日~1988年(昭和63年)12月25日です。

【(長谷川)泰子】の生没年は、1904年(明治37年)5月13日~1993年(平成5年)4月11日で
す。生年は、小林、泰子、中也、昇平の順。泰子は、平成の世の中を少しだけ生きました。

長谷川泰子については、詩人・佐々木幹郎が脚本を書いたドキュメンタリー映画「眠れ蜜」(岩佐寿弥監督、1976年)や、作家・村上護の聞き書き「中原中也との愛―ゆきてかへらぬ」が詳しいほか、本人が中也について書いた「中原の思い出」「思い出すこと」などで知ることができます。

ここでは、泰子が「白痴群」に寄せた詩を読んでみます。

詩三篇
小林佐規子

  悧巧な世界

夏の夜は黒い土が身にしたしいのです。
人々の肌と呼吸から製された夜気が流れます。
皮膚と、心臓が、合して、
人様が美しい白い蟲になり、
それぞれ物がたりが好きになります。
だから、とても、噪ぎたいのですが。
笑いが途中で止まって、その続きが本格の千鳥足になります。
なんと、悧巧な世界ではありませんか。

  礼讃

芳淳な血はないかも知れません。
はじめから整理されて感情が動きますから。
簡単な笑いから出るむらぎの心は、
規約がなくて時々あふれてしまうし。
結構です。
人間のとっておきの自然の論理。
のんきに哀愁、体を健康にしましょう。
怒ると、数字や青物市場や突走りやバナナ店のせり上げのとび出す、
ええ今日は。何故ご機嫌がいいんです。
美しい生理の獣さん。
中々しっかりしたものですよ、あまり間違いのない。
とっておきの自然界の論理家です。

  ある夜

南京豆の皮のはしきれ。
なまめくかなしみは、胸に移る。
灰はざらざら。
人の声はしみて来ない。
夜は戸外でそのあたりに、
とまり、
じつにじつに平凡な夜でした。
(「白痴群」第3号、昭和4年9月)

※「新編中原中也全集・別巻(下)」より。「新かな」に直しました。編者。

中也の詩から学び取ろうとした跡が見えて、なんだか愛(いと)おしくなります。

今回はここまで。

(つづく)

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