« 「眠れ蜜」の監督、岩佐寿弥さん死去 | トップページ | ひとくちメモ「一筆啓上、安原喜弘様」昭和6年2月16日・その1 »

2013年5月11日 (土)

ひとくちメモ「一筆啓上、安原喜弘様」昭和6年10月16日・その3

(前回からつづく)

「月の浜辺」を
中原中也は賞揚したにもかかわらず関口隆克にたしなめられ
帰ってから吟味したことを安原に書き送ったのが
昭和6年10月16日付けの書簡の一部です。

中に「濃密に核心がこれと分るように見付かります」とあるのは
詩人としては捨てがたいものがあると
関口には反論しなかったものを
安原には伝えておきたかった、ということでしょうか。

「批評」というほどのものではないにしても
詩人が目指している「詩」の方角が
「月の浜辺」とそれほど外れたところにあるものではないことを
この感想は示しているように見えます。

新宿の空にあがった広告気球を歌った詩があります。
「早大ノート」にある未発表詩です。

秋の日曜

私の部屋の、窓越しに
みえるのは、エヤ・サイン
軽くあがった 二つの気球

青い空は金色に澄み、
そこから茸(きのこ)の薫(かお)りは生れ、
娘は生れ夢も生れる。

でも、風は冷え、
街はいったいに雨の翌日のようで
はじめて紹介される人同志はなじまない。

誰もかも再会に懐(なつか)しむ、
あの貞順(ていじゅん)な奥さんも
昔の喜びに笑いいでる。
 

この詩が
「元気もなんにもありません。自分ながら情けない気持ちで生きています。」と
手紙に書く詩人と無縁ではないことを知って
少しびっくりします。
(直接に関係があるものではなさそうですが。)

新全集ではこの書簡を、

72 昭和6年10月16日 安原喜弘宛 封書
表 京都市左京区百万遍 京都アパートメント 安原喜弘様
裏 十六日 中也 東京市外千駄谷八七二 高橋方

――と、整理し、紹介しています。
72とあるのは、通し番号です。
225が、「新全集・第5巻」発行時点(平成15年)の最終番号です。

(この項終わり)

にほんブログ村:「詩集・句集」人気ランキングページへ
(↑ランキング参加中。記事がおもしろかったらポチっとお願いします。やる気がでます。)

 

« 「眠れ蜜」の監督、岩佐寿弥さん死去 | トップページ | ひとくちメモ「一筆啓上、安原喜弘様」昭和6年2月16日・その1 »

中原中也の手紙/終生の友・安原喜弘へ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

« 「眠れ蜜」の監督、岩佐寿弥さん死去 | トップページ | ひとくちメモ「一筆啓上、安原喜弘様」昭和6年2月16日・その1 »

2019年10月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    

カテゴリー

無料ブログはココログ