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2013年9月18日 (水)

ひとくちメモ「白痴群」前後・愛の詩・3「無題(ああ雲はさかしらに笑い)」

(前回からつづく)

「無題(ああ雲はさかしらに笑い)」は
なんとも「つき合いにくい」詩です。
ダダが中途半端に現われて
余計に付き合いにくくしているような詩です。

文語五七調で格調を維持していた詩が
最後になって
「芥箱(ごみばこ)の蓋」でぶっちぎれ
意味不明の闇に墜落していきます。
この作り方自体がダダですが
文語とダダのミスマッチを狙って
成功していません。

何よりも
通じないのですから。

捨てきれないのか
捨てようとする意志がないのか
ダダは終生詩人から離れていきませんが
この詩はダダから抜け出ようとしていた時期の作品ですから
残っても仕方ありませんが。

「むなしさ」
「朝の歌」
「臨終」
――を歌い終えた詩人の
昭和2―3年(推定)の作品です。

無 題
 
ああ雲はさかしらに笑い
さかしらに笑い
この農夫 愚かなること
小石々々
エゴイストなり
この農夫 ためいきつくこと

しかすがに 結局のとこ
この空は 胸なる空は
農夫にも 遠き家にも
誠意あり
誠意あるとよ

すぎし日や胸のつかれや
びろうどの少女みずもがな
腕をあげ 握りたるもの
放すとよ 地平のうらに

心籠め このこと果し
あなたより 白き虹より
道を選び道を選びて
それからよ芥箱(ごみばこ)の蓋
 

雲があり
農夫がいる。
――
そして少女もいる。

となれば
おおよそ見当はついてきそうですが
では詩人はどこにいるでしょうか?

雲が詩人でしょうか?
農夫が詩人でしょうか?
それともほかに詩人はいるでしょうか?

第3連にヒントが詰まっています。
「すぎし日」「胸のつかれ」
「びろうどの少女」「みずもがな」
そして
「腕をあげ 握りたるもの
放すとよ 地平のうらに」
――の2行。

これをどう読むか。
とくに
「腕をあげ 握りたるもの 放す」の主語は何か。
主語は詩人か?

「みずもがな」は「見ずもがな」ですから
「見たくなかった」という意味で
「会わなければよかった」ということになるのなら
泰子との出会いを示します。

それで「腕をあげ握っているものを放す」のは
泰子か詩人か、どちらかになります。

どう読んでも
全4連が詩人の「内面」のようです。

「腕をあげ握っているものを放す」のは
きっと詩人でしょう。

心を込めてそのことを実行し
自分としては間違いもなく歩んできたものですが
それからでした!
芥箱(ごみばこ)の蓋!

蓋を開けたのかわかりませんが
目の前にゴミ箱があったのです。

ダダイスム
文語五七調
選ばれた言葉は平明。
しかし、わかりやすいようでわかりにくい
鮮明なイメージが結ばれませんが
なんとか読むことはできそうです。

雲と農夫とビロードの少女の物語
――と読めれば
詩はさらに近づいてくるかもしれません。

今回はここまで。

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