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2013年11月14日 (木)

「生活者」から「山羊の歌・初期詩篇」へ・「都会の夏の夜」その2

(前回からつづく)

「都会の夏の夜」には
「イカムネ・カラア」のように
聞きなれない言葉がありますが
単語の意味を知るのは割合容易です。

辞書を引くなり
参考書で調べるなりすれば
たいがいは解答が得られますし
前後関係から推測して
大体は見当がつく場合がほとんどでしょうから。

都会の夏の夜
 
月は空にメダルのように、
街角に建物はオルガンのように、
遊び疲れた男どち唱(うた)いながらに帰ってゆく。  
――イカムネ・カラアがまがっている――

その脣(くちびる)は胠(ひら)ききって
その心は何か悲しい。
頭が暗い土塊(つちくれ)になって、
ただもうラアラア唱ってゆくのだ。

商用のことや祖先のことや
忘れているというではないが、
都会の夏の夜の更――

死んだ火薬と深くして
眼(め)に外燈(がいとう)の滲(し)みいれば
ただもうラアラア唱ってゆくのだ。

「カラア」は
「カラーに口紅」の「カラー=襟(えり)」であることが分かれば
「イカムネ」はその種類を表わしていることも分かりますね。

この詩の最終連

死んだ火薬と深くして
眼(め)に外燈(がいとう)の滲(し)みいれば
ただもうラアラア唱ってゆくのだ。

――のような詩句にぶつかったとき
辞書や参考書で調べても
まず明快に答えを見出せないことが多く
「想像する」ほどで読み終えたことにしておくのが
普通のケースでしょう。

このようなとき
類推や連想を頼りにするしか手はありません。

その方法に
磨きをかけるしかないのです。

その一つが
前後関係から類推するという方法で
これは「言語の理解」の基本中の基本で
常日頃あらゆる場面で人々が意識的無意識的に行っていることです。

それほど普通に行っていることであり
有効なことだから行っている方法です。

死んだ火薬と深くして
――という詩行は
都会の夏の夜の「風景」の中に置いてみれば
類推がいっそう奏功してくることでしょう。

都会の夏の夜の更――
――という前連終行から連想するのです。

連が終わりいったん「間(ま)」が開けられて
「断絶」が設けられた印象ですが
ここは「断絶」ではなく「断続」を読みます。

詩は
全体で「繋がっている」はずですから。

であるならば
「死んだ火薬」は
「人気もなく灯りの消えた街」の情景として浮かび上がってきます。

「死んだ火薬」というのは
さっきまで喧騒に満ちて皓々と輝いていた街のことで
その街がまだそこにあるかのように
その街に「深く」交わった人々が
歌い行進する様子であることが読めてきます。

その人々の眼には
外燈がまだ滲みるほどに鮮やかなのです。

今回はここまで。

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