カテゴリー

2024年1月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      
無料ブログはココログ

« 雪のクロニクル/「生い立ちの歌」その3 | トップページ | 雪のダブルイメージ/「生い立ちの歌」その5 »

2014年5月 8日 (木)

恋の秋/「生い立ちの歌」その4

(前回から続く)

「生い立ちの歌」が「白痴群」に発表されたとき(第1次形態)には
「Ⅰ」の末尾に

     ★
暁 空に、雲流る
     ×
我が駒よ、汝は、寒からじか
     ×
吹雪のうち、
散る花もあり……

――という詩行がありましたが
「山羊の歌」で削除されました。
(「新全集」第1巻・解題篇より。)

「Ⅰ」と「Ⅱ」との間に
こうした詩行がはさまったままでは
ぼんやりしたものが残ってしまうとみなされて
思い切って排除したものでしょう。

「汚れっちまった悲しみに……」
「雪の宵」
――とのつながりが
この削除によってより明確になり
強化されました。

つぎに置かれた「時こそ今は……」への流れも
鮮やかさを増しました。

そして「雪の宵」も
「生い立ちの歌」も
「時こそ今は……」も
「秋」の章に配置された意図がくっきりして来ました。

「汚れっちまった悲しみに……」が
「みちこ」の章に置かれた意図も
ここでいっそうはっきりして来ました。

生い立ちの歌

   Ⅰ

    幼 年 時

私の上に降る雪は
真綿(まわた)のようでありました

    少 年 時

私の上に降る雪は
霙(みぞれ)のようでありました

    十七〜十九

私の上に降る雪は
霰(あられ)のように散りました

    二十〜二十二

私の上に降る雪は
雹(ひょう)であるかと思われた

    二十三

私の上に降る雪は
ひどい吹雪(ふぶき)とみえました

    二十四

私の上に降る雪は
いとしめやかになりました……

   Ⅱ

私の上に降る雪は
花びらのように降ってきます
薪(たきぎ)の燃える音もして
凍(こお)るみ空の黝(くろ)む頃

私の上に降る雪は
いとなよびかになつかしく
手を差伸(さしの)べて降りました

私の上に降る雪は
熱い額(ひたい)に落ちもくる
涙のようでありました

私の上に降る雪に
いとねんごろに感謝して、神様に
長生(ながいき)したいと祈りました

私の上に降る雪は
いと貞潔(ていけつ)でありました

(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。「新かな」に変え、一部「ルビ」を加えました。編者。)

泰子との「恋」は「秋」にさしかかっていたのです。

「生い立ち」の中で歌われるほど
泰子は「歴史化」されました。

今回はここまで。

にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村

« 雪のクロニクル/「生い立ちの歌」その3 | トップページ | 雪のダブルイメージ/「生い立ちの歌」その5 »

013中原中也/「山羊の歌」の世界/「汚れっちまった悲しみに……」の周辺」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 恋の秋/「生い立ちの歌」その4:

« 雪のクロニクル/「生い立ちの歌」その3 | トップページ | 雪のダブルイメージ/「生い立ちの歌」その5 »