二つの調子の混在/面白い!中也の日本語
(前回からつづく)
第1連は
春の日の夕暮は穏かです
春の日の夕暮は静かです
――とルフランし「です」で終わり
最終連は
瓦が一枚 はぐれました
無言(むごん)ながら 前進します
自(みずか)らの 静脈管の中へです
――と展開し「ました・ます・です」で終わるのが
「春の日の夕暮」の行末です。
◇
これは韻(rhyme)でもありますが
ここでは「音」ではなく
詩の「文体」へ注目します。
1連と4連の間の行末は
「だ」「である」が見えませんが
「失い」があるので
です・ます調ではありません。
丁寧語・尊敬語ではありません。
です・ます調が
だ・である調を挟んでいる構造をもつのが
「春の日の夕暮」ということです。
◇
ここですぐさま
「サーカス」を思い出す人は多いことでしょう。
幾時代かがありまして
茶色い戦争ありました
幾時代かがありまして
冬は疾風(しっぷう)吹きました
幾時代かがありまして
……
こちらも
冒頭部をです・ます調ではじめています。
そして
である調へ転調します。
詩末は「ゆやーん ゆよーん」というオノマトペですが。
◇
なぜ、詩のはじまりが
です・ます調なのでしょうか?
それを途中で転調するのでしょうか?
なぜ二つの調子が混在するのでしょう。
面白くもないこんな疑問が
中也の詩の面白さへと向かいます。
◇
今回はこれまで。
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