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2014年7月 4日 (金)

二つの調子の混在/面白い!中也の日本語

(前回からつづく)

第1連は
春の日の夕暮は穏かです
春の日の夕暮は静かです
――とルフランし「です」で終わり

最終連は
瓦が一枚 はぐれました
無言(むごん)ながら 前進します
自(みずか)らの 静脈管の中へです
――と展開し「ました・ます・です」で終わるのが
「春の日の夕暮」の行末です。

これは韻(rhyme)でもありますが
ここでは「音」ではなく
詩の「文体」へ注目します。

1連と4連の間の行末は
「だ」「である」が見えませんが
「失い」があるので
です・ます調ではありません。
丁寧語・尊敬語ではありません。

です・ます調が
だ・である調を挟んでいる構造をもつのが
「春の日の夕暮」ということです。

ここですぐさま
「サーカス」を思い出す人は多いことでしょう。

幾時代かがありまして
  茶色い戦争ありました
幾時代かがありまして
  冬は疾風(しっぷう)吹きました
幾時代かがありまして
……

こちらも
冒頭部をです・ます調ではじめています。

そして
である調へ転調します。
詩末は「ゆやーん ゆよーん」というオノマトペですが。

なぜ、詩のはじまりが
です・ます調なのでしょうか?
それを途中で転調するのでしょうか?
なぜ二つの調子が混在するのでしょう。

面白くもないこんな疑問が
中也の詩の面白さへと向かいます。

今回はこれまで。

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