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2014年8月 2日 (土)

「月」が歌った三角関係/面白い!中也の日本語

(前回からつづく)

「サロメ」を下敷きにしたのなら
「月」に登場する人物たちのキャスティングは
はっきりしてきます。

誰が誰でありと推測することが可能になります。

まずは月に見立てられたのは詩人か否か。

月が詩人ならば
養父とは誰のことで
養父の疑惑とは何のことで
その疑惑に瞳を瞠(みは)っているのは誰でしょうか。
老男とは誰を指すのでしょう。

第1連に現われるキャラクターをおよそ見当をつけられます。

月は詩人ではなく
ほかの誰かのメタファーである、という見方も当然出てきます。

養父の疑惑に瞳を睜(みは)る。
――の主語を月と取る見方も出てくるし
ほかの人物の存在を見ることもできるでしょう。

何種類もの配役が推測できることになりますが
それは断定できることでありませんから
あくまでも可能性です。

読み手それぞれの想像力に
委(ゆだ)ねられているものとしておくのがベストです。

読みを競うことは自由ですが
他人に強要するものではありません。


 
今宵(こよい)月はいよよ愁(かな)しく、
養父の疑惑に瞳を睜(みは)る。
秒刻(とき)は銀波を砂漠に流し
老男(ろうなん)の耳朶(じだ)は蛍光をともす。

ああ忘られた運河の岸堤
胸に残った戦車の地音(じおん)
銹(さ)びつく鑵(かん)の煙草とりいで
月は懶(ものう)く喫(す)っている。

それのめぐりを七人の天女(てんにょ)は
趾頭舞踊(しとうぶよう)しつづけているが、
汚辱(おじょく)に浸る月の心に

なんの慰愛(いあい)もあたえはしない。
遠(おち)にちらばる星と星よ!
おまえの劊手(そうしゅ)を月は待ってる

(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。「新かな」に変え、一部「ルビ」を加えました。編者。)

と言いながら推測の一つもしないでは
詩を読んだことになりませんから
ここではある読みを試みておきましょう。

今宵(こよい)月はいよよ愁(かな)しく、
養父の疑惑に瞳を睜(みは)る。
――という第1連冒頭行に主役級のキャラクターは登場しています。

月は中也その人です。
養父は月(=中也)のライバルである小林秀雄。
その小林の疑惑に目を丸くしている長谷川泰子
――という構図です。

後に小林秀雄自らが「奇怪な三角関係」と呼んだ
中也―泰子―小林秀雄の
この詩を制作した時期の状態が
「月」に歌われたのではないかという読みです。

「山羊の歌」に現われる恋愛(詩)を追っていくと
恋愛(詩)が充満していることに気づきますが
「月」はその早い時期の作品ということになります。

いかがでしょうか?

今回はここまで。

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