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2014年8月19日 (火)

犀星と朔太郎の出発

(前回からつづく)

北原白秋が「朱欒」を発刊したのは1911年(明治44年)1月。

1913年(大正2年)6月に終刊になる間に
同年1月号には室生犀星が
同年5月号には萩原朔太郎が
「朱欒」にそれぞれ詩を発表しました。

二人ともこれが文学的出発となります。

犀星、朔太郎が「朱欒」に詩を発表していた頃
白秋は三浦三崎に俊子とともに移り住み
そこへ家業に行き詰った両親や弟ら家族も同居し
あらたに生計を立てるための事業をはじめましたが
まもなく失敗し東京にまた戻っていったというような
あわただしい日々を送っていました。

下獄事件のほとぼりがさめやらない上でのことながら
創作意欲は衰えず
第1歌集「桐の花」、第3詩集「東京景物詩及其他」を江湖に問う旺盛さを保っていました。

ずっと後になってからのこと(昭和9年)ですが
朔太郎は「詩壇に出た頃」という題でこの頃を回想し
「朱欒」へ投稿した経緯を綴っています。

(略)
学校を止してからは、音楽に熱中してギターなどばかり弾いて居たが、側ら小説や詩集などを読み始めた。

当時詩壇には、北原白秋、三木露風の両巨頭を初めとし、川路柳虹、高村光太郎、佐藤春夫、西条八十、富田砕花等の諸氏が名を成して威張って居り、福士幸次郎、山村墓鳥、加藤介春、生田春月等の諸氏も新進の元気で活躍して居た。

しかし当時の僕には、白秋以外の人は全く興味がなく、殆んどだれの詩も読んで居なかった。ただ白秋氏一人だけを愛読して居た。そこで僕の稀れに作る詩は、たいてい「思ひ出」の模倣みたいになってしまった。詩には自信をもつことができなかった。

(詩集「月に吠える」附録より。角川文庫、平成元年6月5日 改版8版発行。)

朔太郎の散文は
もったいぶったところが微塵(みじん)もなく
平明でわかりやすく書かれてあるのは
実は極めて意図的なことであることが伝わってくるような文体ですね。

それでも後には、もっと白秋氏の影響から脱し、多少自信のある詩が書けて来たので、当時白秋氏の出して居た雑誌「ザムボア」に投書した。

この雑誌には、前から室生犀星が詩を書いて居り、殆んど毎号掲載されて居た。白秋氏は室生君を非常に愛して居て、その詩を常に激賞し「現今詩壇の新しき俊才」と言って推薦されて居た。僕もまた室生君の詩が好きで、むしろ白秋氏の詩以上に愛読して居た。

尚この「ザムボア」には、室生君の外に最近死んだ大手拓次君が吉川惣一郎のペンネームで詩を書いて居た。
(略)

当時の詩壇では、この白秋氏の「ザムボア」と三木露風氏の「未来」とが並行する権威であって、1度この両雑誌に作を載せれば、直ちに詩人として認められるほどの権威を持って居た。

「白露時代」といわれるほど
北原白秋の名声は高まっていました。

俊子との恋がスキャンダルとして扱われるのを
吹き飛ばすかのように
白秋は「桐の花」に自己(内面)を曝(さら)け出しました。

詩の道、歌の道への
揺るぎない信念がそうさせたからでしょう。

「詩壇に出た頃」は続いて
朔太郎が「朱欒」に発表した詩について自己紹介しています。

「愛憐詩篇」の冒頭詩であるこの「夜汽車」を読んでみましょう。

夜汽車

有明のうすらあかりは
硝子戸に指のあとつめたく
ほの白みゆく山の端は
みづがねのごとくにしめやかなれども
まだ旅びとのねむりさめやらねば
つかれたる電燈のためいきばかりこちたしや。
あまたるき”にす”のにほひも
そこはかとなきはまきたばこの烟さへ
夜汽車にてあれたる舌には侘しきを
いかばかり人妻は身にひきつめて嘆くらむ。
まだ山科(やましな)は過ぎずや
空氣まくらの口金(くちがね)をゆるめて
そつと息をぬいてみる女ごころ
ふと二人かなしさに身をすりよせ
しののめちかき汽車の窓より外(そと)をながむれば
ところもしらぬ山里に
さも白く咲きてゐたるをだまきの花。

(三好達治選「萩原朔太郎詩集」岩波文庫、1990年11月15日第47刷発行より。原詩の傍点は” ”で示しました。編者。)

今回はここまで。

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