折りにふれて読む名作・選/夏の夜に覚めてみた夢
今日は気温も上昇し
朝からほかほか。
9時過ぎには日向ぼっこが心地よい日和(ひより)とはなりました。
昨夜は
山田哲人が3本目を打ったところで観戦を中止し寝たのでした。
首を2回振って投げたのが直球でしたから
だいぶ自信があるんでしょう
――と解説の江本が言った直後でした、確か。
その鼻っ柱をコーンと
無理な力を込めない感じで山田はセンター左席へと運んだのでした。
◇
夏の夜に覚めてみた夢
眠ろうとして目をば閉じると
真ッ暗なグランドの上に
その日昼みた野球のナインの
ユニホームばかりほのかに白く――
ナインは各々(おのおの)守備位置にあり
狡(ずる)そうなピッチャは相も変らず
お調子者のセカンドは
相も変らぬお調子ぶりの
扨(さて)、待っているヒットは出なく
やれやれと思っていると
ナインも打者も悉(ことごと)く消え
人ッ子一人いはしないグランドは
忽(たちま)ち暑い真昼(ひる)のグランド
グランド繞(めぐ)るポプラ竝木(なみき)は
蒼々(あおあお)として葉をひるがえし
ひときわつづく蝉しぐれ
やれやれと思っているうち……眠(ね)た
(「新編中原中也全集 第1巻 詩Ⅰ」より。現代かなに変えました。編者。)
◇
なんというタイミング!
「在りし日の歌」は
「秋の消息」
「骨」
「秋日狂乱」
「朝鮮女」
――という名作の並びに
この詩を配置していました。
◇
狡(ずる)そうなピッチャは相も変らず
お調子者のセカンドは
相も変らぬお調子ぶりの
――という詩行は
そのまま昨夜の日本シリーズ第3戦のシーンと同列のものではありません。
まったく関係ありませんが
試合の流れの中で生じる瞬間の攻防は
ナインは各々(おのおの)守備位置にあり
そのナイン同士の駆け引きに左右されるところは同じでしょう。
◇
中也の目には、
ずるそうなピッチャー
お調子者のセカンド
――と映ったのでしょうが
そう見えたのには理由があったのですし
そう見えたのをメタファーとして歌った(詩語にした)のは
日々の鋭い観察があればこそのことなのでしょう。
◇
それにしてもソフトバンクの
セカンドゴロをさばいた選手の見事なフットワークなど
見応えのあるプレーが随所に見られたゲームでした。
中也の見た試合は
ヒットが出なくてやれやれ、だったのに。
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