折りにふれて読む名作・選/秋の消息
木枯らし1号がすでに吹いて
まもなく冬将軍だの
西高東低だの
雪下ろしだの雪掻きだの
……
テレビは冬モードに切り替わろうとしています。
このところ
靴下を履かないでいて足、冷たい!と思っていたら
昨日など、手袋がほしいと感じる早朝の寒さでした。
◇
つるべ落としの暮方(くれがた)には
ああ、冬が来てしまう
落ち葉掃きのおじさんからは
「45リットルが5袋もあっという間さ」などとの声が漏れてきますし。
◇
秋の消息
麻(あさ)は朝、人の肌(はだえ)に追い縋(すが)り
雀(すずめ)らの、声も硬(かと)うはなりました
煙突の、煙は風に乱れ散り
火山灰(かざんばい)掘れば氷のある如(ごと)く
けざやけき顥気(こうき)の底に青空は
冷たく沈み、しみじみと
教会堂の石段に
日向(ひなた)ぼっこをしてあれば
陽光(ひかり)に廻(めぐ)る花々や
物蔭(ものかげ)に、すずろすだける虫の音(ね)や
秋の日は、からだに暖(あたた)か
手や足に、ひえびえとして
此(こ)の日頃(ひごろ)、広告気球は新宿の
空に揚(あが)りて漂(ただよ)えり
(「新編中原中也全集 第1巻 詩Ⅰ」より。現代かなに変えました。編者。)
◇
この詩は
新宿の広告気球の印象が強くて
ビルの谷間の青空に浮かんだアドバルーンのイメージが先立ちますが
よく読めば
手や足に、ひえびえとして
――とあるのに気づいて
素足じゃ冷たい、靴下履こう
手が寒い、手袋が要るなと感じるのと同じじゃんと
違う方向からアプローチが可能になりました。
朝晩は冷え込みますが
昼日中の日向はポカポカポカポカと
何事も忘れる天国の日々ですね。
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