茨木のり子厳選の恋愛詩・初めての高良留美子/「海鳴り」
「恋唄」の章で
男性の詩ばかりを読んできた茨木のり子は
最後に女性の恋歌を読みます。
女のひとの詩も少し読みましょう。
――と、その入り方(筆致)は実にさりげないものですが
「万葉集」以来の女歌の歴史の中に
現代女性の恋歌を位置づけて(比較して)
「はるかに光ったものを発見」するのです。
◇
最初に登場するのが高良留美子(こうら・るみこ)の次の詩です。
◇
海鳴り
ふたつの乳房に
静かに漲(みなぎ)ってくるものがあるとき
わたしは遠くに
かすかな海鳴りの音を聴く。
月の力に引き寄せられて
地球の裏側から満ちてくる海
その繰り返す波に
わたしの砂地は洗われつづける。
そうやって いつまでも
わたしは待つ
夫や子どもたちが駈けてきて
世界の夢の渚(なぎさ)で遊ぶのを。
――詩集「見えない地面の上で」
(岩波ジュニア新書「詩のこころを読む」より。)
◇
はじめ、いったいこの詩の
どこが恋愛詩なのだろう?という疑問を禁じえませんでした。
実を言うとその解読のために
この1か月以上を費やしてきました。
今少しづつ少しづつ
この詩人の大きさが見えてきて
茨木のり子が取り上げた「詩のこころ」が
少しづつ分かってきたところ――と言うのは早すぎるでしょうか。
この詩人の詩や評論のほんの一部をかじって
現在進行中ですが
その苦闘さながらの読みを記しておくのも
それほど無意味ではない、きっと。
そう思って
えいや、と「初めて読む高良留美子」をはじめます。
◇
途中ですが
今回はここまで。
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