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2015年11月 6日 (金)

茨木のり子厳選の恋愛詩・初めての高良留美子/「海鳴り」2

(前回からつづく)

 

「海鳴り」は

高良留美子が1963年から6年間に作った詩を集めた

第3詩集「見えない地面の上で」に収録されています。

 

今(2015年)からおよそ半世紀前に作られた

高良留美子30歳代前半の詩です。

 

 

といったところで

詩の制作年を知っても

それが詩の読みに何か役立つものではないことに

すぐさま気づいてしまう――という詩です。

 

ある日ある時に作られたという

特定の時間であるよりも

この詩が孕(はら)んでいる時のスケールが

ぐんと大きいので

その「時」は無用であるかのようなものです。

 

おそらくこの詩の最大の個性(特徴)が

ここにありますが

はじめは冒頭連の、

 

ふたつの乳房に

静かに漲ってくるものがあるとき

――に目を奪われ

それがどのような「時」なのか

ことさら男性には実感できるものではないから逆に

それが、

遠くの海鳴りの音へと連なっていく流れに

ストレスなく誘われていくからでしょう。

 

 

この「時」は

太古の昔から

女性が感知してきたはずの悠久の時間であるに違いなく

ある日ある時、

そしてある所で誰それがという

WHを超えた普遍性を持っている時間といってよいでしょうか。

 

 

そのような時間が

月の満ち欠けにシンクロしてやってきては

「わたしの砂地」を洗っていく。

 

わたしは洗われ続ける。

 

 

ここでもう一度

原詩を読みましょう。

 

 

海鳴り

 

 

ふたつの乳房に

静かに漲(みなぎ)ってくるものがあるとき

わたしは遠くに

かすかな海鳴りの音を聴く。

 

月の力に引き寄せられて

地球の裏側から満ちてくる海

その繰り返す波に

わたしの砂地は洗われつづける。

 

そうやって いつまでも

わたしは待つ

夫や子どもたちが駈けてきて

世界の夢の渚(なぎさ)で遊ぶのを。

 

         ――詩集「見えない地面の上で」

 

(岩波ジュニア新書「詩のこころを読む」より。)

 

 

 

女性は

自分のからだを訪れる

周期的な自然の波(リズム)に聞き耳を立てて

いつまでもいつまでも待っています。

 

すると

やがてそこは

夫や子どもたちが駈け寄って来ては遊ぶ世界の夢の渚になっている

――

 

 

乳房と海鳴り。

 

月と地球(の海)。

 

波と砂地。

 

夫と子どもたちが遊ぶ世界。

夢の渚。

 

 

今まさに

わたしは悠久の自然のなかにあるようですが……。

 

 

途中ですが

今回はここまで。

 

 

 

 

 

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