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2016年1月17日 (日)

茨木のり子厳選の恋愛詩・初めての高良留美子」/「塔」へ

 

 

 

 

(前回からつづく)

 

 
(茨木のり子の読みを離れています。編者。)

 

 

 

 

 

 

 

高良留美子は

 

1932年(昭和7年)12月の生まれで

 

思潮社の「高良留美子詩集」は

 

1971年に発行されたのですから

 

40歳近くで現代詩文庫入りしたことになります。

 

 

 

この詩集中に

 

第1詩集「生徒と鳥」、

 

第2詩集「場所」

 

第3詩集「見えない地面の上で」の全篇のほか

 

未刊詩篇の幾つかも収録されています。

 

 

 

1971年以前の詩作品を概観できるのですが

 

仮に読んだとしても(読めたとしても)、

 

およそ50年の「近作」に触れることはできません。

 

 

 

 

 

 

「公園で」のタイトルをもつ詩のうち

 

第1詩集「生徒と鳥」にあるものを読んでいるということが

 

高良留美子詩集の詩活動の全体から見て

 

ほんのわずかな位置をしか占めないことを理解しながら

 

もう少し第1詩集をひもといてみましょう。

 

 

 

というのも

 

第1詩集「生徒と鳥」に収められている「塔」を読まないでは

 

「海鳴り」「木」にはじまる

 

高良留美子の詩世界への糸口すらも見失ってしまい

 

それでは元の木阿弥になりますから。

 

 

 

 

 

 

「塔」は

 

謎のような詩ですが

 

この詩人の生誕にからむ「芯」のようなものです。

 

 

 

そのようなものらしく思える作品です。 

 

その一つです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 塔が崩れてから二千年、不幸は何処にもなかった。学校がえりの少女たちよ、この篠懸

通りの石段は君たちの脚幅には大きすぎる。赤い陽がまわり、君たちの頬は夕焼け色に

かがやく。わたしは君たちの悩みを追うまい、それはある月のある宵、家伝の金蒔絵の箱

に閉じこめられてしまったのだ。誰のとも知れぬ葬列は延々としてつづくではないか。

 

 

 

 塔が崩れてから二千年、不幸はひとびとの頭上で怪物に化け、誰ももう幸福の幻影さえ

描くことができない。弾丸が満月をかすり、塔が昇天するのを見た。血が濁った水を押し流

す、問いがうずまく。塔が見つかるのは何処の夏だろう。街の片すみで君は臆病そうな、し

かし堅固そうな瞳を光らせていたっけ。商店街は扉を閉ざし、安時計が時を刻む。「生活」

は銀杏並木に降る。

 

 

 

 舟のともづなを解こう。

 

 ふくろうは茂みの中で眼をむくだろう。人間共の、人間共の小心翼々がおまえにわかる

か。だがかれらと同じ赤い血が身内に流れている場合、それはまことにつらい拒否となる。

 

 

 

 

 

 

 

 忍耐がかんじんだ。リラの花が海辺をかざるのは夜だけではない。月は虹のあいだに逸

楽の砂地を見たのだ。葡萄の実はうれる。はなやかな仮装が地獄の道を通って行った。何

時かえってくるとも知れぬ、だが祭りはたしかに酔いしれた鉄骨に不思議な作用を及ぼし

たのだ。

 

 

 

(思潮社「高良留美子詩集」所収「生徒と鳥」より。)

 

 

 

 

 

 

途中ですが

 

今回はここまで。

 

 

 

 

 

 

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