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2016年1月 4日 (月)

折りにふれて読む名作・選/中原中也/「早春散歩」

「厳(いか)めしい紺青(こあお)」の空が

年明けて4日連続して続きます。

 

もういいよという半端(はんぱ)な気持ちを戒(いまし)めるように

陽は惜しみなく降りそそぎます。

 

空の青は時間帯により濃度を変え

一定しているものでないことを知りますから

やがては風が吹き

雲が現われるのですが

こんなにも続く晴天は記憶をたどってもなかなか出てきません。

 

蝋梅(ろうばい)が開花し

白梅が早咲きするニュースは珍しいものではなく

ここ相模原地域でも見かけられます。

 

 

春の姿態はさまざまですし

年によっても異なるのは当たり前ですね。

 

いかめしいこあおの空にも

やがて霞(かすみ)が立つ日が訪れ

風が吹く日がきます。

 

 

早春散歩

 

空は晴れてても、建物には蔭(かげ)があるよ、

春、早春は心なびかせ、

それがまるで薄絹(うすぎぬ)ででもあるように

ハンケチででもあるように

我等の心を引千切(ひきちぎ)り

きれぎれにして風に散らせる

 

私はもう、まるで過去がなかったかのように

少なくとも通っている人達の手前そうであるかの如(ごと)くに感じ、

風の中を吹き過ぎる

異国人のような眼眸(まなざし)をして、

確固たるものの如く、

また隙間風(すきまかぜ)にも消え去るものの如く

 

そうしてこの淋しい心を抱いて、

今年もまた春を迎えるものであることを

ゆるやかにも、茲(ここ)に春は立返ったのであることを

土の上の日射しをみながらつめたい風に吹かれながら

土手の上を歩きながら、遠くの空を見やりながら

僕は思う、思うことにも慣れきって僕は思う……

 

(「新編中原中也全集 第2巻・詩Ⅱ」より。現代表記に改めました。編者。)

 

 

春風は

詩人のこころを靡(なび)かせます。

 

薄衣であるかのように

ハンカチであるかのように

こころを千切って

きれぎれにしてしまいます。

 

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