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2016年1月20日 (水)

茨木のり子厳選の恋愛詩・初めての高良留美子/「塔」へ2

(前回からつづく)

(茨木のり子の読みを離れています。編者。)

 

高良留美子を初めて読む人が

「塔」に出会うのは

第1詩集「生徒と鳥」の中においてです。

 

詩集18篇の11番目に「公園で」があり

「生徒と鳥(1)」

「塔」

「風」

「生徒と鳥(2)

――と続く流れの中にさりげなく配置されています。

 

 

「塔」はなぜここに現れるのかという問いは

第3詩集「見えない地面の上で」を読み進んでいて

集末のほうに

一連の「幼年期」詩編が現われたときに起こった問いを問うのに似ています。

 

それは

詩人はなぜ幼時の経験を歌うのかと問うようなことですから

わかりきったことを問うのと同じにくどいことと言わねばなりません。

 

 

「塔」については

詩人自らが折あるごとに触れていますから

まずはそれらに目を通しておきましょう。

 

 

一つは

「三つの詩集のあとがき」と題する小文で

「高良留美子詩集」(思潮社)に収録されています。

 

そのうち「生徒と鳥」に言及した部分――。

 

 

 わたしはこれらの詩の大半を1956年と57年に書いた。56年の夏から57年の2月まで

フランスに旅行した間に書いたものが多い。「抱かれている赤ん坊」「公園で」「風」「パリ

祭」「昨日海から……」「冬」などがそれで、またそれ以前のテーマをまとめた「生徒と鳥」

1、2、「海辺」なども同じ時期のものである。「塔」は1953年に、「距離」は55年頃書き、

「走る子供」から「雨の日」までに並べた6篇と「アパート時代」は57年の2月以後に書い

た。

 

(思潮社「高良留美子詩集」より。洋数字に改めました。以下同。)

 

 

「塔」の制作年だけがここに記されています。

ここでは1953年という年を銘記しておきましょう。

第1詩集の中でも

最も早い時期の制作であることがわかります。

 

 

次に「廃墟のなかから」という小自伝の1節――。

 

 

 詩を書きはじめたのは大学2年の終りごろ、1953年の1月だったと思う。目白の田中屋と

いう喫茶店がまだいまのように立派に改造される前、汽車の座席のように黄色い椅子が

並んでいるときだったが、そこで高校時代の友だちと会ってその友だちの両親の長い“かく

しつ”の話を聞かされたあと、家へ帰り、突然夜なかにほとんど自動速記で詩を1篇書い

た。それが「生徒と鳥」に収めた散文詩「塔」である。このとき以来、銀杏並木はわたしの詩

にときどきあらわれるようになった。

 

(原作の傍点は、“  ”で示しました。編者。)

 

 

詩を書きはじめた具体的なきっかけは、

友人が詩人に打ち明けた両親の「ごたごた」でした。

 

そのことと、

「生活」は銀杏並木に降る――という「塔」の詩行とは

因果関係を明かすものではありませんが、

なにがしかの連なりを暗示しているようでもあります。

 

このときの詩の書き方は

後になっても

自動速記という方法として使われることになります。

 

 

 またわたしはときたま、動いたあとなどに、自動速記で詩を書くことがある。たとえば「見え

ない地上の上で」のなかの「挙式」「通夜」「帰ってきた人」などがそれだが、他の作品でも

最初の行は自動的に出てくることもあり、2行目以下を書くために1年ないし2、3年を経過

してしまうこともある。

 

(同。)

 

 

1971年発行の「高良留美子詩集」に収録された「詩論」や「自伝」で

「塔」に関するエピソードを知るのですが

最近になって刊行された「わが二十歳のエチュード」(2014年)では

高良留美子の1953年の活動(ことさら内面の)が

顕微鏡で見るように拡大されます。

 

「塔」の位置が、その中で

ベールを剥ぎ取られるようにして

明らかになります。

 

 

途中ですが

今回はここまで。

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