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2016年2月25日 (木)

折に触れて読む名作・選/茨木のり子「鶴」

鶴はいま、どうしているか?

もうとっくに

インドの平原に降り立っているだろうか。

 

オホーツクに流氷が見られ

ようやく網走の海に接岸したというニュースを聞いていて

ふとアネハヅルのヒマラヤ越えを思い出しました。

 

同時に

茨木のり子の「鶴」を読みたくなりました。

 

 

 

鶴が

ヒマラヤを越える

たった数日間だけの上昇気流を捉え

巻きあがり巻きあがりして

九千メートルに近い峨峨(がが)たるヒマラヤ山系を

越える

カウカウと鳴きかわしながら

どうやってリーダーを決めるのだろう

どうやって見事な隊列を組むのだろう

 

涼しい北で夏の繁殖を終え

育った雛もろとも

越冬地のインドへ命がけの旅

映像が捉えるまで

誰にも信じることができなかった

白皚皚(はくがいがい)のヒマラヤ山系

突き抜けるような蒼い空

遠目にもけんめいな羽ばたきが見える

 

なにかへの合図でもあるような

純白のハンカチ打ち振るような

清冽な羽ばたき

羽ばたいて

羽ばたいて

 

わたしのなかにわずかに残る

澄んだものが

はげしく反応して さざなみ立つ

今も

目をつむれば

まなかいを飛ぶ

アネハヅルの無垢ないのちの

無数のきらめき

 

    一九九三・一・四 NHK「世界の屋根・ネパール」

 

(ちくま文庫「茨木のり子集 言の葉3」所収 詩集「倚りかからず」より。)

 

 

大きな鳥が空を飛ぶのを

肉眼で見ることは

普通の人は

まずないことでしょう、一生の間にも。

 

今でこそ

You Tubeで容易に見られますが(→Demoiselle Crane or Mongolian Common Crane

1993年のNHKの映像を見た詩人は

残像の消えないうちに

この詩を作りました。

 

ドキドキする詩人の心臓の音が

刻まれたような言葉が

こちらにも響いてくるような。

 

 

 

 

 

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