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2016年2月27日 (土)

折に触れて読む名作・選/茨木のり子「最上川岸」

 
 

 

「鯛」の次にありました。

 

目にとまり

そのまま終わりまで読んで

目が開かれる思い。

 


 
最上川岸

 

子孫のために美田を買わず

 

こんないい一行を持っていながら

男たちは美田を買うことに夢中だ

血統書つきの息子に

そっくり残してやるために

他人の息子なんか犬に喰われろ!

黒い血糊のこびりつく重たい鎖

父権制も 思えば長い

 

風吹けば

さわさわと鳴り

どこまでも続く稲の穂の波

かんばしい匂いをたてて熟れている

金いろの小さな実の群れ

<あれはなんという川ですか>

ことこと走る煤けた汽車の

まむかいに坐った青年は

やさしい訛(なまり)をかげらせて 短く答える

<最上川>

彼のひざの上に開かれているのは

古びた建築学の本だ

 

農夫の息子よ

あなたがそれを望まないのなら

先祖伝来の藁仕事なんか けとばすがいい

 

和菓子屋の長男よ

あなたがそれを望まないのなら

飴練るへらを空に投げろ

 

学者のあとつぎよ

あなたがそれを望まないのなら

ろくでもない蔵書の山なんぞ 叩き売れ

 

人間の仕事は一代かぎりのもの

伝統を受けつぎ 拡げる者は

その息子とは限らない

その娘とは限らない

 

世襲を怒れ

あまたの村々

世襲を断ち切れ

あらたに発って行く者たち

無数の村々の頂点には

一人の象徴の男さえ立っている

 

(ちくま文庫「茨木のり子集 言の葉1」所収 詩集「鎮魂歌」より。)

 

 

きっぱりと

こうまで言い切る。

 

「鯛」もそうでした。

 

 

血が噴き出すような

また、返り血を浴びたに違いない。

 

プロテストと呼びもしたい。

 

 

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