茨木のり子厳選の恋愛詩・初めての高良留美子/「生徒と鳥(1)」
(前回からつづく)
(茨木のり子の読みを離れています。編者。)
◇
「塔」は
1953年に「作品」の一部として書かれ
1958年発行の第1詩集「生徒と鳥」に収録されました。
行分け詩――散文詩――行分け詩で構成されていた「作品」が
散文詩の部分を独立して「塔」と題され
発表されたということになります。
この時、改行が加えられ
散文詩でありながら
4連の形になり
現在の「塔」となりました。
はじめ自動速記で書かれた散文詩に
わずかですが「形」が整えられたのです。
◇
「わが二十歳のエチュード」中の「作品」にも
それが作品であるための「形」への意志を読むことができます。
行分け詩・散文詩・行分け詩
――という配列そのものに
その意志の一つはあります。
このように配列された詩の
一つ一つの詩の内容(モチーフ)が
連続していようといまいと
全体で「作品」となったのには
理由があったに違いありませんから。
◇
「塔」はところが
「生徒と鳥」に発表されたときには
「作品」中の散文詩だけが選択されました。
そして
公園で
生徒と鳥(1)
塔
風
生徒と鳥(2)
――と並ぶ配列で新たに登場します。
詩集のタイトル詩である「生徒と鳥(1)」へ
こうしてたどり着きます。
◇
「生徒と鳥(1)」
かれは生徒だ。で教師がかれをつれて行く。どこへ行くかわからない。教師にもよくわか
らない。二人は途中で鳥にあった。眼の大きい、脚の太い古代の鳥だ。生徒は鳥にあいさ
つする、それから鳥と一緒に歩き出した。
鳥と生徒はある砂漠の中の国へ行った。はだしの黒い男たちが荷を運んでいた。広場の
立派な建物には誰も住まず、扇風機がひとりで廻って、骸骨の形した男たちはくさいところ
ではだかで眠る。
重い荷物が砂漠の中を遠い国から運ばれてきて、海を越えて遠くの国へ運ばれた。すべ
ては黒い男たちのまったく知らないことだった。
生徒は物乞いする足なえの少年の眼の中に、かれらの黒い大洋をみとめた。
(思潮社「高良留美子詩集」所収「生徒と鳥」より。)
◇
途中ですが
今回はここまで。
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