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2016年2月22日 (月)

茨木のり子厳選の恋愛詩・初めての高良留美子/「大洪水」そして「月」

(前回からつづく)

 

(茨木のり子の読みを離れています。編者。)

 

 

 

 

「風」は

はじめ、家並みをぬって吹く風であり

次に、石壁の前に立ちどまり

次に、少しずつ死んでいき

最後には、死に絶えます。

 

こうして擬人化された風が

現れては消えてなくなる過程で

家並みや枯枝や街角や

壁や少女や

少女の髪の毛やらに交渉(関与)し

存在しなくなった街角に

別のものがたりがはじまる

――という物語を語り終えて

詩は終わりました。

 

 

詩集「生徒と鳥」は

「冬」

「大洪水」

「月」

「燃える人」

「街路樹の月」

「雨の日」

――などの同系列の詩をところどころに並べ

「公園で」「生徒と鳥(1)」「塔」を経て

「風」へと至ります。

 

 

「塔」へという求心力のいっぽうで

「風」からという遠心力を感じさせるような構造といえるでしょうか。

 

「塔」(の系列詩)のもつ物語性を読むのに

「風」(の系列詩)はヒント以上の役割を果たしているようです。

 

 

「風」を読んだ眼差しには

同系列の詩群が

親密になっているのを感じることができます。

 

いくつかに

目を通しましょう。

 

 

大洪水

 

広い地面

周囲にコンクリートの高い壁

風ひとつ立たない

地面に石ころがころがっている

 

何の変哲もない石っころ

石ころの中に水がある

水の鏡に空が映る

 

石ころの中の水が少しずつ増殖する

すると水に映った空も増殖する

石ころの中で、水と空とが増殖する

 

一滴の水が

地面にこぼれ落ちる

やがて地面は水でいっぱいになる

 

空でいっぱいになる

水と空とが押しあって

コンクリートの壁を壊してしまう

 

 

世界中の地面にころがっている石ころが

水と空とを増殖しはじめる

波ひとつ立てないで

水が一滴石ころからこぼれ落ちる

 

 

素粒子の世界とでもいってよい

物質の爆発のメカニズムを見るような――。

 

この爆発につづいては

月への狙撃。

 

 

 

月をねらって射つ!

すると月は笑って、

その銀の笑いは

わたしの魂の

眠っている枝から

百羽の鳥を誘い出す。

 

(思潮社「高良留美子詩集」所収「生徒と鳥」より。)

 

 

月を射つというのは

じっくり見る、というほどのことでしょう。

 

見上げる姿勢は

いつも目撃の姿勢です。

 

見ているだけで

何かが解き放たれる

爽快感。

 

 

この詩に巡りあえてもはや

高良留美子ファンであるかもしれませんが

これらの詩は

第1詩集のほんの一部に過ぎません。

 

 

途中ですが 

今回はここまで。

 

 

 

 

 

 

 

 

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