茨木のり子厳選の恋愛詩・初めての高良留美子/「生徒と鳥(1)」続
(前回からつづく)
(茨木のり子の読みを離れています。編者。)
◇
「生徒と鳥(1)」は
完全な行分け詩でもなく
完全な散文詩でもなく
散文詩が改行(1行空き)を加えられ
結果、連の形を持った散文詩になっていて
「塔」と似た構造の詩です。
◇
連と連の間には
時間と空間の転換があり
場面が展開しますから
4連の詩と読めば
ここでも起承転結の流れを読むことになりますが
それでいいのかはわかりません。
◇
意味やメッセージを追うことができる詩なのか
そもそもそのあたりがわかりませんが
意味を否定する詩ではなさそうですから
追いかけてみますと――。
◇
主格のかれ・生徒の行動が記述されています。
生徒だから教師がいて
教師が生徒をどこかへ連れて行く途中で
鳥に会ったところで
詩の表面からは消えてしまいます。
生徒に重要なのは鳥であることを引き立たせるためにだけ
教師は現れたかのようです。
生徒は
眼の大きい、脚の太い古代の鳥にあいさつし
一緒に歩きだします。
第1連は
このような「物語」のはじまり(起)です。
◇
鳥と生徒は、
砂漠の中の国へ行きます。
そこでは、はだしの黒い男たちが荷を運んでいる。
ここまでは自然な描写のようですが
次の1行から尋常ではない風景が立ち現われます。
広場があり立派な建物があるけれど誰も住んでいないところに
扇風機が回っていて
骸骨の形をした男たちは
くさいところで
裸で眠るのです。
黒い男たちのほかに
骸骨の形をした男たちが出てきます。
(ここで1字下げで改行され、1行空きではないけれど、第3連の形になります。)
◇
重い荷物が砂漠の中を運ばれ、海の遠くの国へ運ばれた、
だが、すべては黒い男たちの知らないことだった。
――と第3連は、やや引いた感じで語られ、
続けて、最終連。
生徒は
物乞いする、足の萎(な)えた少年の眼の中に
黒い大洋を見た
――と閉じるのです。
◇
物乞いする足なえの少年は
どこかリアルな存在感があります。
その少年の眼の中に映る黒い大洋が
想像力を刺激します。
◇
砂漠の中の国
誰も住まない広場の立派な建物
ひとり回る扇風機
骸骨の形した男たち
くさいところ
……と
夢の記述かと思わせるようなメタファーの連続が
俄(にわ)かに現実味を帯びるような感覚を起こさせます。
◇
黒い男たちの「黒」と
「黒い大洋」の「黒」が
錯綜(さくそう)し反響するのが妙です。
絶妙ですし
謎です。
◇
途中ですが
今回はここまで。
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