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2016年3月29日 (火)

滝口雅子アウトライン特別編/茨木のり子の恋愛詩「私のカメラ」

(前回からつづく)

 

滝口雅子編著の「青春の詩集」のなかに

茨木のり子の「私のカメラ」があるのも

偶然のことではないでしょう。

 

ややこしくなってきましたが

茨木のり子の「詩のこころを読む」に導かれて

滝口雅子の恋愛詩を読んでいるうちに

散文に目をやっていて「青春の詩集」を読んでいると

中に茨木のり子の恋愛詩「私のカメラ」が鑑賞されてあるのにぶつかりました。

 

 

私のカメラ

 

それは レンズ

 

まばたき

それは わたしの シャッター

 

髪でかこまれた

小さな 小さな 暗室もあって

 

だから わたし

カメラなんてぶらさげない

 

ごぞんじ? わたしのなかに

あなたのフィルムが沢山しまってあるのを

 

木洩れ陽のしたで笑うあなた

波を切る栗色の眩しいからだ

 

煙草に火をつける 子供のように眠る

蘭の花のように匂う 森ではライオンになったっけ

 

世界にたったひとつ だあれも知らない

わたしのフィルム・ライブラリイ

 

(二見書房「青春の詩集」より。)

 

 

この詩の中の、

 

木洩れ陽のしたで笑う

波を切る栗色の眩しいからだ

煙草に火をつける 

子供のように眠る

蘭の花のように匂う 

森ではライオンになったっけ

――のような男へのまなざし。

 

 

滝口雅子に限らず

多くの詩人が

目、眼、瞳……見ることへの関心から無縁でいるはずもありませんが

第4詩集「見る」をもつほど

滝口は視覚へのこだわりの強い詩を残しました。

 

男もしばしば

その「見る」対象になりました。

 

 

たとえば、「若もの」は

全行が若者の像の描写にちかいものです。

 

先に読んだばかりの「男S」には

 

腰はドラム罐

肩に這い上る肉の“こぶ”

 

とか

 

横顔の深い“しわ“

木綿生地の厚い“しわ”

 

などとあるのは記憶に新しいことです。

 

 

「私のカメラ」の茨木のり子と

滝口雅子の幾つかの詩は

相互に響き合いますが

それが実作の場面で意識されていたかはわかりません。

 

互いにライバル意識みたいなものが

あったかもしれませんし

偶然であったかもしれません。

 

 

滝口雅子が「青春の詩集」に

茨木のり子の「私のカメラ」を選んだのは

なんといっても

それが恋愛詩の名作であるからです。

 

詩集「鎮魂歌」(1965年)に収められています。

 

この恋唄に歌われている男(=あなた)が

夫君・三浦安信であることは

もはや知る必要もないことでしょう。

 

 

途中ですが

今回はここまで。 

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