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2016年3月 2日 (水)

茨木のり子厳選の恋愛詩/滝口雅子を知っていますか? 「秋の接吻」

(前回からつづく)

 

秋の接吻

 

ひとを愛して

愛したことは忘れてしまった

そんな瞳(め)が咲いていた

萩の花の白くこぼれる道

火山灰の白く降る山の道

すすきを分けてきた風が

頬をさし出して

接吻(せっぷん)した

ひとを愛して

愛したことは忘れてしまった

            ――詩集「窓ひらく」

 

(岩波ジュニア新書「詩のこころを読む」より。)

 

 

この詩の作者は

滝口雅子(たきぐち・まさこ)です。

 

1918年(大正7年)に生まれ

2002年(平成14年)に亡くなりました。

 

高良留美子は1932年生まれ、

茨木のり子は1926年生まれです。

 

 

久しぶりに

茨木のり子の「詩のこころを読む」に戻ってきました。

 

「恋唄」の章は、

女性の詩人を

高良留美子の次に滝口雅子を紹介していますので

次の新川和江を含めて外せません。

 

 

茨木のり子は

まず「男について」を紹介し

その後でこの詩「秋の接吻」を読んでいるのですが

ここでは先に「秋の接吻」を読むことにしました。

 

 

10行の詩の

冒頭と末尾の2行、合計4行がルフランで

きっちり締まった濃密な措辞(そじ)に

はじめ釘(くぎ)付けになり

何度も読み返しているうちに

じわじわーっと浮き上がってくるような生鮮なイメージ。

 

なんとも高雅な

なんともエロスの漂う1行1行に

想像の翅(はね)が広がっていきます。

 

咲きこぼれる白萩の花と

女性の瞳とが一瞬、混淆(こんこう)するかのような

この錯視感はなんでしょうか。

 

 

そう問うたものではなく

その理由を述べたわけではありませんが

茨木のり子はこの詩を「恋の果て、の感慨」と

明快に読みます。

 

なぜそれほどに明快であるか、というと

茨木のり子がこの詩に初めて触れたときの思いが

まざまざと今(この詩を鑑賞をした時)立ち上がってくるからでした。

 

人の目にまつわるその思いとは――。

 

 

目というのは小さな容積ながら、実に無限のものを湛(たた)えています。

でも皆、自分のことにかまけて他人の目に湛えられているものに注意を向けたりはしません。

 

どこかの高原にひっそりと立つ女のひとの瞳(め)のなかに、

ひとを愛して、燃焼しつくして、そして死別、生別、裏切りによってか……

ともかくその愛から遠くきてしまって、もうすべてを忘れ去ってしまったかのような、

一見、ほほけたような瞳を作者は発見します。

 

(岩波ジュニア新書「詩のこころを読む」より。改行を加えてあります。編者。)

 

 

ひっそり立つのは

女性か白萩か。

 

白萩が女性か

女性が白萩か。

 

いずれであっても

瞳が咲いています、この詩の中では。

 

 

途中ですが

今回はここまで。 

 

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