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2016年3月20日 (日)

茨木のり子厳選の恋愛詩/滝口雅子を知っていますか? 「男S」

(前回からつづく)

 

茨木のり子「詩のこころを読む」にはないのですが

滝口雅子の詩をもう少し読みましょう。

 

「かなしみよ こんにちは」

「男について」の次に置かれたのが

「男S」です。

 

男についての詩が続きますが

男を見る女(詩人)のまなざしに読みごたえがあります。

 

 

男S

 

酒やけした一匹の猿

天井にはね返るけたたましい声

こっけいな こっけいな

フッフッフッ

フッと笑いやむと

 

崖の裾の水のいろ

きりきりねじまいた男のエゴイズム

その果てのいろ

ハンドルのとれたいろ

拒絶のいろ かなしみのいろ

ごつごつの岩山に ある日とつぜん

ふき出した鉱泉のいろ

あるとは知らなかったその

色のつめたい澄みよう

 

腰はドラム罐

肩に這い上る肉の“こぶ”

まるで缶詰のふた押しあけて出た男

こっけいな こっけいな

フッフッフッ

フッと見ると

 

横顔の深い“しわ”

木綿生地の厚い“しわ”

うすよごれた運河に

さっぱりと苦労を沈めた

男よ

ぶ厚い本をかざして

その“しわ”を隠すな

 

(土曜美術社「新編滝口雅子詩集」所収「鋼鉄の足」より。傍点は“ ”で示しました。編者。)

 

 

確かに、男は酒焼けした赤ら顔の猿。

けたたましく声張り上げて天井に響かせ

滑稽そのもの。

 

フッフッフッフと

不気味に笑い

笑い止(や)むと

――と第2連へ。

 

 

男は、

崖のすその水の「いろ」になり

男のエゴイズムを歌いますが

エゴイズムの果ての「いろ」は

ハンドルがとれた「いろ」

拒絶の「いろ」

悲しみの「いろ」と

ゴツゴツしている岩山ですがある日

吹き出した鉱泉の「いろ」ですし

それまであるとは知らなかった

色は冷たく澄んでいる。

 

 

ドラム缶の腰

盛り上がる肉の瘤(こぶ)

缶詰から出てきたような男の

滑稽なのをよく見れば、という

見るのは女=詩人です。

 

 

最終連はより接近して

男の横顔の深いシワ

木綿(のズボン)の厚いシワに(目を向けて)

苦労を苦労と見なさない

(愚痴を言っているほどのヒマもないであろう)

さっぱりと苦労を沈めた男を

あっぱれと言おうとしては(思いとどまり)

ぶ厚い書物を振りかざし

魅力であるそのシワを隠そうとするのはよしなさい、とアドバイスします。

 

シワは男の勲章なのだからと言わんばかりに。

 

 

これはやはり

男へのエールなのでしょう。

 

絶望とか憂愁とか苦悩とか苦労とかを通過中の

決して通過し得ないかもしれないそれらに

さっぱりとしている男への。

 

 

途中ですが

今回はここまで。 

 

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