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2016年3月19日 (土)

茨木のり子厳選の恋愛詩/滝口雅子を知っていますか? 「かなしみよ こんにちわ」

(前回からつづく)

 

「男について」の一つ前に置かれているのが

 「かなしみよ こんにちわ」です。

 

 

かなしみよ こんにちわ

 

うしろからきて呼びとめる

煙色の低音

 かなしみよ こんにちわ

 

道はうしろからまくれてきて

窓は遠くまで見とおしだ

 

5月 黄色いチューリップ

唇をくいっと曲げて

道のまんなかで踊り出す

  かなしみよ

  こんにちわ

 

2月 国境の冬

に身を伏せて眠る

雪の山につもる対話

対話は 男の夢を刺す

 

8月 つよいジンのにおい

夜と夜明けがすれちがうときの

灯をつけたままで ひとは

夜通し別のひとを待つ

 (かなしみよ こんにちわ)

 

明け方の舗道をふるわせて

波うつ口笛

絶望の優しさよ

 

(土曜美術社「新編滝口雅子詩集」所収「鋼鉄の足」より。)

 

 

何か西洋の映画のシーンを思わせるイメージは

フランソワーズ・サガン「悲しみよこんにちは」によるものであるより

この小説のエピグラフに引用された

ポール・エリュアールの詩のせいか。

 

「灰とダイヤモンド」(アンドレ・ワイダ)のシーンのようであるし 

口笛がジェームズ・ディーンを思わせもするし

どこまでも広がってしまう連想には

けじめをつけるきっかけがありません。

 

これらはまったく見当はずれのことなのかもしれませんが

何かのモデルがあるように思えてなりません。

 

 

「男について」を恋唄と見た茨木のり子のまなざしは

炯眼(けいがん)というべきで

あたかも親友の心の底をつかんでいるような確かさがあります。

 

事実、茨木のり子19262006と滝口雅子の2人は

日向あき子(1930~2002)宅での集まりで

牧羊子(19232000

牟礼慶子(1929~2012)とともに

親しい関係にありました。

 

 

ホームページ「来歴」

詩人、牟礼慶子の業績を伝える親族によるメモリアムですが

この集まりに参じた詩人5人の姿が

牟礼慶子のアルバムからピックアップされています。

 

日向あき子の写真の裏に

牟礼の字で「35.6 日向さんを訪問」とあり

牟礼の写真がないのは、

撮影したのが牟礼だったからでしょうか。

 

356は昭和35年6月。

 

60年安保反対闘争の国会デモで

樺美智子が死んだのが

615日でしたからその前後のことになります。

 

それぞれがビール瓶を前に

茨木のり子はたばこに火をつけようとし

なにやら真剣な勉強会の印象ですが

合間の雑談には

「雨夜の品定め」みたいな場面もあったでしょうか。

 

肉声が聞こえてきそうな

写真ばかりで貴重です。

 

滝口雅子(19182002)は40歳代のはじめで

まさしく「鋼鉄の足」を出版した直後でした。

 

 

詩集「鋼鉄の足」も「窓ひらく」同様に

ⅠとⅡに分かれて構成され

Ⅱの冒頭詩「少女の死」が序詩の役を負うのについで

2番目にあるのがこの「かなしみよ こんにちわ」です。

 

 

途中ですが

今回はここまで。

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