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2016年4月13日 (水)

滝口雅子アウトライン特別編/茨木のり子の恋愛詩集「歳月」/「五月」

 

(前回からつづく)

 

(滝口雅子を離れています。)

 

 

「歳月」(花神社、2007年)を急遽手に入れ

全39篇を通しで読んでみました。

 

ほぼ半日がかりで。

そして繰り返し読んでいます、今も。

 

 

よくぞここまで書いたもの! と感じながら

もう一度、冒頭の詩「五月」を反芻していて

何故この詩が冒頭に置かれたのだろうかという疑問がぼんやりと湧きはじめ

今でははっきりした問いになっているのに気づきました。

 

「五月」を

まずは読んでみましょう。

 



 

五月

 

なすなく

傷ついた獣のように横たわる

落語の<王子と狐>のように参って

子狐もなしに

夜が更けるしんしんの音に耳を立て

あけがたにすこし眠る

陽がのぼって

のろのろ身を起し

すこし水を飲む

樹が風に

ゆれている

 

(「歳月」より。)

 

 

はじめに読んだときに

この詩の主格が死者であるかを疑い

そのわけがないことは

 

横たわる

参って

子狐もなしに

耳を立て

眠る

身を起し

水を飲む

 

――とある述語を読んで理解します。

 

これらの述語の主体が

この詩の作者=詩人であることは

疑いありませんが

そういう割り切り方では済まないような何かがあるのはなぜだろうと

こびりついて離れないものがあるのを禁じ得ません。

 

 

それは、

 

傷ついた獣のように横たわる

――の主体が死者であるかのような

一種の錯覚から来るもののようです。

 

傷ついた獣とは

医師であった亡き夫のことだと思い違いして

すぐさま修正するものの

思い違いが残像として残っているような。

 

その思い違いを

あたためて保存しておきたいような。

 

 

それは

詩人が意図し企(たくら)んだものではなく

自然に滲み出し映し出される

どこかで経験した覚えのある感覚。

 

――というところまで来て

集中の他の詩(行)に

いくつか思い至ることになりました。

 

その一つ。

途中から引きます。

 

 

夢で遊ぶ病

 

川っぷちの小さな劇場(こや)で

田舎芝居を見物中

不意にわたしは居なくなった

大騒ぎで探されたあげく

川べりまで探されたあげく

どこに通じるのかもわからない暗い階段に

一人ぽつねんと腰かけているのを発見された

 

(略)

 

一人になりたかったのでもなく

芝居がつまらなかったわけでもなく

実にふうわりと

人気ない階段に坐るべき必然性があったのだが

今となっては自分にさえ

うまく説明してやれない

あれは奈落に通じていたのだったろうか

 

(略)

 

セーラー服は教室で

幾何なんぞ聴いているのだが

そこにわたしは居なかった

蛍をみて

  わが身よりあくがれいずる魂かとぞみる

とうたった和泉式部も同病なのかしら

 

その気は今も続いていて

午前三時頃

幽冥 境もものかは

あなたとこの上なく甘美なあいびきに

ひっそり出かけていたりする

 

(同書より。)

 

 

この詩のタイトル「夢に遊ぶ病」も

詩中の「夢遊病」も

そして「幽冥 境」(ゆうめい さかい)も

「あくがれいずる」も

そのほか詩に散らばっているあの世とこの世の間(あいだ)の世界――。

 

これらが

「五月」にかぶさってくるのかもしれません。

 

 

途中ですが

今回はここまで。 

 

 

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