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2016年4月 7日 (木)

滝口雅子アウトライン特別編/茨木のり子の恋愛詩「私のカメラ」から「その時」へ

 

(前回からつづく)

 

 

滝口雅子の「青春の詩集」を読んでいて

茨木のり子の「私のカメラ」にぶつかり

その濃密であり抑制されたエロスの世界にふれることになったのを

なんという巡りあわせと呼べばいいでしょうか。

 

二人の詩人は

実際に面識があったという以上に

創られた詩世界というフィールドで

連続し接続しクロスオーバーします。

 

 

ここで「歳月」の詩のいくつかを

読むことは許されるでしょう。

 

ここで読まないことのほうが

変なことになってしまいますから。

 

 

詩集「歳月」中に「その時」はあり

それはまぎれもなく

「私のカメラ」に繋がる恋唄の名作です。

 

 

その時

  

セクスには

死の匂いがある 

 

新婚の夜のけだるさのなか

わたしは思わず呟いた

 

どちらが先に逝くのかしら

わたしとあなたと

 

そんなことは考えないでおこう

医師らしくもなかったあなたの答

 

なるべく考えないで二十五年

銀婚の日もすぎて 遂に来てしまった

 

その時が

生木を裂くように

 

(岩波文庫「茨木のり子詩集」より。)

 

 

詩集「歳月」は

2007年に発表されました。

 

詩人の死の翌年のことです。

 

40以上の詩篇が

清書された草稿として残り

発見した遺族が詩人自筆の目次通りに本にしました。

 

この単行詩集を手に入れることはそう難しいことではありませんが

岩波文庫「茨木のり子詩集」(谷川俊太郎編、2014年)には

10篇が収録され

一般読者にも身近な存在になりました。

 

この詩「その時」も

同文庫で読めます。

 

 

冒頭の2行にははじめ

フランス映画のキャッチコピーかと思わせる刺激(衝撃)を受けるのですが

読み通せば現在進行中の描写なのではなく

25年前の新婚初夜の思い出であることが分かります。

 

(だからほっとすると言っているのではありません。)

 

この詩が

亡き夫・安信を偲んで歌った恋唄の絶唱であることに気づくのに

時間はかかりませんが

作られたのは安信の死の直後でした。

 

それにしても

新婚の夜の性の営みのさなかに

その肉体の死を思いやるという矛盾のような感覚は

どうして生まれるものでしょうか。

 

どんな気持ちを歌ったものでしょうか。

 

なにが歌われたのでしょうか。

 

エロスにまとわりつく死の影というようなテーマが

茨木のり子という女性詩人によって紡がれていることに

面食らうような感覚があり

何度も何度も繰り返して読まずにはいられません。

 

 

しかし……

これは昨日読んだばかりの「私のカメラ」に

まっすぐに繋がっている詩だ

――ということにもすぐに気づきます。

 

「私のカメラ」が

その時あの時を永遠に封じ込めようとして

眼のシャッターをきったように

「その時」は

もはやこの世にいないあなた(夫)と

新婚のその夜のその時に

交わした会話(つぶやき)を

録音テープに収めたようなものです。

 

「私のカメラ」は

あなたが生存中に

「その時」は

死後に書かれた違いがあるだけです。

 

どちらも

今は存在しないようだけれども

かつて確かに存在したという記憶が

永遠に存在し続けることを

強力に主張しているのです。

 

 

途中ですが

今回はここまで。 

 

 

 

 

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