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2016年4月28日 (木)

滝口雅子アウトライン特別編/茨木のり子の恋愛詩集「歳月」/「古歌」

 

(前回からつづく)

 

(滝口雅子アウトラインを離れています。)

 

 

 

 

愛の歌はまた悲しみの歌である。

 

それはこの世では

かつて存在したが

今はない愛を歌った歌であるから。

 

今ここにはない

愛。

 

かつて確かに存在した

愛。

 

かつて在った愛は

心のなかに今在る。

 

詩集「歳月」は

その記録です。

 

 

古歌

 

古い友人は

繃帯でも巻くように

ひっそりと言う

「大昔から人間はみんなこうしてきたんですよ」

 

素直に頷く

諦められないことどもを

みんななんとか受けとめて

受け入れてきたわけなのですね

 

今ほど古歌のなつかしく

身に沁み透るときはない

読みびとしらずの挽歌さえ

雪どけ水のようにほぐれきて

 

清冽の流れに根をひたす

わたしは岸辺の一本の芹

わたしの貧しく小さな詩篇も

いつか誰かの哀しみを少しは濯(あら)うこともあるだろうか

 

(花神社「歳月」より。)

 

 

この詩にYは現れません。

 

隠れています。

 

耐えがたい悲しみに耐えてきた先人の言葉を噛みしめ

詩人も長い間、忍びに忍んでいる時を過ごして

その中で言の葉を紡(つむ)ぎ出してきました。

 

その詩作を振り返った歌です。

 

 

ラブレター(詩)が書かれた相手があの世にあり

書いた本人も死んでしまった。

 

書いた詩人が生前に

死後発表を意図したラブソングを読むことができるのは

生きている読者だけです。

 

詩はこのように

死者のために書かれ

生者(読者)のために書かれました。

 

 

詩集「歳月」が

悲歌(エレジー)である所以(ゆえん)です。

 

 

「古歌」は詩集の「Ⅲ」に置かれた作品です。

 

「Ⅲ」は

詩人が残した目次メモに記されていない詩篇を集めたもので

5篇のうちの一つであることが

詩集末尾にある「『Y』の箱」(宮崎治)に解説されています。

 

目次メモは長いのと短いのと二つが残されてあり

はじめに書かれた短いメモにあった4篇は

後で新しく書かれた長いメモから削除されてあったもので

この4篇と合わせた9篇が

「Ⅲ」へ配置されたということです。

 

 

詩人は記しました。

 

わたしの貧しく小さな詩篇も

いつか誰かの哀しみを少しは濯(あら)うこともあるだろうか

 

 

どれほど多くの悲しみを

洗い流しているか。

 

読んだ人に

想像できることです。

 

詩人は

嵐のような悲しみを

なんとか受けとめて

受け入れてきたのでした。

 

 

途中ですが 

今回はここまで。 

 

 

 

 

 

 

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