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2016年5月27日 (金)

滝口雅子を知っていますか?/第1詩集「蒼い馬」へ・その2「問いかけ――序詩」

(前回からつづく)

 

 

太陽

太古世代

はちゅう類の中生代

森林

アンデス山系やパミール高原

上昇する気流

化石

太古の宇宙に遠のく星

何億万年の年れい

地表

<近代>

……

 

「女のひとは」が抱える時間や空間が

恐ろしく巨大であるからといって

知覚できないほどのものではありませんから

これは形而上の光景を指示しているものではないでしょう。

 

「女のひとを吹きぬける太古世代の風の音」は

(敗戦から2年後の)1947年5月に

青い麦の田野に立つ女性に吹いているのです。

 

 

「蒼い馬」の最終詩「女のひとは」は

詩集冒頭の序詩「問いかけ」へ流れこんできた長い時間を振り返っては

ふっとため息がもれるような

安息するような

未来を見晴(みは)るかすような現在の詩人の眼差しを示していることでしょう。

 

長い時間がどのようなものであったか。

 

詩集を読めばそれに触れることができると

序詩と最終詩とが教えてくれます。

 

その序詩「問いかけ」は

滝口雅子という詩人が

日本の詩壇に発した最初の一声です。

 

 

問いかけ――序詩

 

空の庭園の ひとつひとつの星の

ふきあげのかげに 黙って立ちつくす

人よ

地上のかなしみを どんなふうにして

過ぎてきましたか どんなふうにして

天の星までたどりつきましたか

 

(「新編滝口雅子詩集」より。)

 

 

ここにも星があります。

 

熱砂ふる太古の宇宙に遠のく星たち

――と「女のひとは」に現れた星が。

 

 

万感こもるものを

こぼれないようにこぼさないように

詩人の眼差しは天空に向けられているように思えてなりません。

 

「女のひとは」で

その星の彼方から

風の音は聞こえてきました。

 

「問いかけ」に現れる

ひとつひとつの星と

この星が異なるものであるはずがありません。

 

 

人よ

――と「問いかけ」で呼びかけられるその人は

詩を読む読者でありますが

この詩を歌った詩人その人でありそうです。

 

詩集「蒼い馬」の世界が

こうして開かれます。

 

 

「新編滝口雅子詩集」(土曜美術社)の二つある解説の一方で

詩人の白井知子は次のように

第一詩集「蒼い馬」までの長い時間について記しています。

 

 1938年に上京してからこの詩集の上梓まで、17年の歳月がかけられた。詩集の「あとがき」には

「……私の生いたちもあり、また第二次世界大戦で、20年住んだ故郷朝鮮の、そこにある一切の有形

無形を失いましたから……」と記されているが、この歳月は、生々しい体験を虚構に鍛えあげ、詩人滝

口雅子を鍛えあげた、機熟するためのものであったと言える。

 

 

途中ですが

今回はここまで。

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