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2016年6月28日 (火)

折にふれて読む中原中也の名作/「朝(雀の声が鳴きました)」

 

 

小林秀雄の1946年は

母堂の死去

「新日本文学」による戦争責任の追及のはじまり

明治大学教授を辞任

水道橋駅ホームからの転落事故

……など身辺ただならぬ事態に立て続けに見舞われた年です。

 

「モオツアルト」は

そのような日々に追われる7月に書かれたことが

新潮文庫「モオツアルト・無常ということ」の解説(江藤淳)に記されています。

 


 
「創元」の1946年12月号に

この「モオツアルト」と

中原中也の「詩四編」とが掲載されたのです。
 

 

「モオツアルト」と中原中也の「詩四編」とが

なんらかの内(在)的関係にあるとかないとか

そのような大それた分析を試みるつもりは

毛頭ありません。

 

両者は

文学雑誌「創元」の1946年12月号に

同時に発表されたという関係以上のものではなく

これまでに関係を言及されたことはありません。

 

けれども

中原中也はこの時に生存しておらず

故人である詩人の作品の掲載を決めたのは

小林秀雄でした。

 

4編の詩を選択したのも小林秀雄でしたから

これほどの強い関係を無関係というのも

あまりに不自然です。

 

このことについての実証的研究は

研究者に委ねることにしましょう。

 

 

ここでは

このあたりのことを踏まえながら

4編の詩のすべてにとにかく目を通すことにしましょう。

 

最後に残されたのは「朝」です。

 

 

 

雀の声が鳴きました

雨のあがった朝でした

お葱(ねぎ)が欲しいと思いました

 

ポンプの音がしていました

頭はからっぽでありました

何を悲しむのやら分りませんが、

心が泣いておりました

 

遠い遠い物音を

多分は汽車の汽笛(きてき)の音に

頼みをかけるよな心持

 

心が泣いておりました

寒い空に、油煙(ゆえん)まじりの

煙が吹かれているように

焼木杭(やけぼっくい)や霜(しも)のよう僕の心は泣いていた

                        (1934・4・22)

 

(「新編中原中也全集 第2巻・詩Ⅱ」より。新かなに変えました。編者。)

 

 

これで「創元」に載った「詩四編」のすべてに

目を通したことになります。

 

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