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2016年6月19日 (日)

折にふれて読む中原中也の名作/「いちじくの葉」

酷熱の夏日がやってくる前に

強い風が吹く雨の合間の曇り日が続きますが

この日々の爽快さは梅雨の恵みの一つなのに

はやく青天になってくれと炎熱日を願うのは

凡人の身勝手というものでしょうか。

 

もっと今=現在を感謝して生きればよいものを!

――なんて、自らを戒めます。

 

炎熱無風にくらべたら

今の爽快な気候を

ありがたく感じられないのは

野分(台風)のありがたさが感じられないのと似ていますね。

(無論、台風が惨禍を残すことは承知の上での話です。)

 

 

蝉(せみ)はまだ鳴きはじめませんが

いちじくの葉はぐんぐん茂り

風は電線を揺らす時が今日もあります。

 

中原中也は

自然を凝視(ぎょうし)しながら

今、その時に湧き上がる悲しみを歌います。

 

 

いちじくの葉

 

夏の午前よ、いちじくの葉よ、

葉は、乾いている、ねむげな色をして

風が吹くと揺れている、

よわい枝をもっている……

 

僕は睡(ねむ)ろうか……

電線は空を走る

その電線からのように遠く蝉(せみ)は鳴いている

葉は乾いている、

風が吹いてくると揺れている

葉は葉で揺れ、枝としても揺れている

 

僕は睡ろうか……

空はしずかに音く、

陽は雲の中に這入(はい)っている、

電線は打つづいている

蝉の声は遠くでしている

懐しきものみな去ると。

       (1933・10・8)

 

(「新編中原中也全集 第2巻・詩Ⅱ」より。新かなに変えました。編者。)

 

 

1933年(昭和8年)制作。

中也26歳です。

 

 

 

 

 

 

 

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