中原中也の鎌倉/「在りし日の歌」清書の前後・その2
昨夜おそかったので朝食後午睡。
夜会話書を読む。
青山二郎に手紙。
今月も無事に終った。
来月は帰省だ。
浴後詩なる。2編。
(角川書店「新編中原中也全集」第5巻「日記・書簡」本文篇より。新かな、洋数字に変えました。編者。)
◇
これは、中原中也、1937年(昭和12年)9月30日の日記です。
この日から1週間後の10月6日、鎌倉養生院に入院。
10月22日午前零時10分、永眠しました。
◇
日記は死のおよそ3週間前のものです。
「会話書」とは、フランス語会話の本のこと。
この頃、ランボーなどフランス詩の翻訳への意欲は衰えず
渡仏の希望を胸に秘めていたのかもしれません。
「浴後詩なる。2編。」とある詩は
未発表詩篇「秋の夜に、湯に浸り」と「四行詩」のことだそうです。
(同上書・解題篇より。)
それを読みましょう。
◇
秋の夜に、湯に浸り
秋の夜に、独りで湯に這入(はい)ることは、
淋しいじゃないか。
秋の夜に、人と湯に這入ることも亦(また)、
淋しいじゃないか。
話の駒が合ったりすれば、
その時は楽しくもあろう
然(しか)しそれというも、何か大事なことを
わきへ置いといてのことのようには思われないか?
――秋の夜に湯に這入るには……
独りですべきか、人とすべきか?
所詮(しょせん)は何も、
決ることではあるまいぞ。
さればいっそ、潜(もぐ)って死にやれ!
それとも汝、熱中事を持て!
※ ※
※
四行詩
おまえはもう静かな部屋に帰るがよい。
煥発(かんぱつ)する都会の夜々の燈火(ともしび)を後(あと)に、
おまえはもう、郊外の道を辿(たど)るがよい。
そして心の呟(つぶや)きを、ゆっくりと聴くがよい。
(同上書・第2巻「詩Ⅱ」本文篇より。新かなに変えました。編者。)
◇
途中ですが
今回はここまで。
« 中原中也の鎌倉/「在りし日の歌」清書の前後 | トップページ | 中原中也の鎌倉/「在りし日の歌」清書の前後/小林秀雄の家までの道 »
「091中原中也の鎌倉」カテゴリの記事
- 中原中也の鎌倉/「在りし日の歌」清書の前後/「ひからびた心」の風景(2016.11.05)
- 中原中也の鎌倉/「在りし日の歌」清書の前後/「子守唄よ」の風景(2016.11.03)
- 中原中也の鎌倉/「在りし日の歌」清書の前後/「渓流」の風景(2016.11.02)
- 中原中也の鎌倉/「在りし日の歌」清書の前後/「夏と悲運」の風景(2016.11.02)
- 中原中也の鎌倉/「在りし日の歌」清書の前後/「梅雨と弟」の風景(2016.11.01)
« 中原中也の鎌倉/「在りし日の歌」清書の前後 | トップページ | 中原中也の鎌倉/「在りし日の歌」清書の前後/小林秀雄の家までの道 »
コメント