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2016年10月31日 (月)

中原中也の鎌倉/「在りし日の歌」清書の前後/「雨の朝」の風景

 

鎌倉で制作した詩篇のうち


風景や自然の描写が混ざらないものがあり


それらは大抵が回想する詩です。

 

 

ほかに、思索し内省する詩があり


これらに風景描写は希薄(きはく)になります。

 

 

回想するのは幼少期の家族や


学校での思い出になります。

 


(成人して後の経験を歌った詩もあります。)

 

 

回想するのは過去のことですから


ここに現れる風景が


鎌倉であるはずはありません。

 

 



 

 

雨の朝

 



⦅麦湯(むぎゆ)は麦を、よく焦(こ)がした方がいいよ。⦆


⦅毎日々々、よく降りますですねえ。⦆


⦅インキはインキを、使ったらあと、栓(せん)をしとかなきゃいけない。⦆


⦅ハイ、皆さん大きい声で、一々(いんいち)が一……⦆


         上草履(うわぞうり)は冷え、


         バケツは雀の声を追想し、


         雨は沛然(はいぜん)と降っている。


⦅ハイ、皆さん御一緒に、一二(いんに)が二……⦆


         校庭は煙雨(けぶ)っている。


         ――どうして学校というものはこんなに静かなんだろう?


         ――家(うち)ではお饅(まん)じゅうが蒸(ふ)かせただろうか?


         ああ、今頃もう、家ではお饅じゅうが蒸かせただろうか?

 

 

(「新編中原中也全集」第1巻「詩Ⅰ」より。新かなに変えました。編者。)

 

 

 

 

この詩は


1937年(昭和12年)「四季」6月号に発表されました。

 

 

小学校時代の思い出を歌った名作の一つです。

 

 



 

 

ここにある「現在」は何でしょうか。

 

 

過去は⦅  ⦆で括られた会話体の中にあり


地の文に詩人の現在はあります。

 

 

 

――どうして学校というものはこんなに静かなんだろう?

――家(うち)ではお饅(まん)じゅうが蒸(ふ)かせただろうか?


ああ、今頃もう、家ではお饅じゅうが蒸かせただろうか?

 

 

3か所出てくる「?」で終る詩行を


詩人は何によって喚起(かんき)されたのでしょう。

 

 

この疑問は空しいでしょうか。

 

 



 

 

途中ですが


今回はここまで。

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