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2016年11月21日 (月)

新川和江・抒情の源流/「ノン・レトリックⅡ」という答え

 

 

詩が追い求める

普遍的で切実なテーマ。

 

テーマというと

仰々しくはあるのですが。

 

正面から

そのようなものに向かっているのが「ノン・レトリック Ⅰ」に続く

「ノン・レトリック Ⅱ」です。

 

 

ノン・レトリック Ⅱ

        マルセル・カミュの「熱風」をみる

 

黒人ベイジャフロールが

電報を打つ

フォルタレザからバイアへ

恋人の待つバイアへ

<私が行く>と

 

――愛している とか

早く顔がみたい とか

つけ足さなくてもいいのかね

――必要ないね

   愛しているのは あたりまえ

   早く顔がみたいの あたりまえ

   <私が行く>それが現在のすべて

 

ファルタレザからバイアへ

ぐい!

と一本彼はロードをひいたのだ

熱いかまどで焼きあげた石で

ハートで

靄(もや)などかかるいとまがあろうか

その上をまっしぐらに飛んで<私が行く>

 

木よ 何故言わないの?

東京 メーン・ストリート

並木の青葉は矢鱈(やたら)にかげりが多すぎる

不要な枝葉をすっぽりとはらい落とし

何故言わない? たくましい幹もあらわに<ここに私が立つ>と

靴よ 定期入れよ カフスボタンよ

何故言わない? <私が>と

都会の甘い夕暮のなかに

何故語尾をにごらせ融和させてしまうのだ?

 

男よ 何故言わない?

一杯のコーヒーが熱いあいだに

何故言わない? <きみが欲しい>と

遠まわしのプロポーズで美辞麗句で

何故ちっぽけな茶碗のふちを万里の長城にしてしまうのだ?

千枚のラブレターを書くことで

何故千枚のコスチュームを身にまといつけてしまうのだ?

林檎にサクリと歯をあてるように

女よ 何故言わない? <私もやっぱりあなたが欲しい>と

 

現代詩文庫64「新川和江詩集」より。

 

 

こちら「ノン・レトリック Ⅱ」によって

明らかになるのは

男と女の間に

無用であるかのようなもの=レトリックです。

 

 

こちらでは一挙に

愛の行為と言葉(レトリック)の距離が問われ

レトリック論が

いつしか恋愛論に変っています!

 

 

途中ですが

今回はここまで。

 

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