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2016年12月21日 (水)

新川和江・抒情の源流/詩人の来歴・その5/幼年・少年少女詩篇「秋のいちばんさいしょの風は」

 

 

「明日(あした)のりんご」Ⅰから

もう一つ。

 

40篇の終りの方の詩には

秋が訪れています。

 

 

秋のいちばんさいしょの風は

 

秋の

いちばんさいしょの風は

ほそい草を  いっぽんいっぽん

ていねいにより分けて吹く

ながい休暇(きゅうか)に

とりとめもなくぼやけてしまった

わたしの心にも

くっきりと 道をつけてくれる

 

はいって行こう その道をたどって

心のさらに深い場所へ――

風が遠くの谷間の村の

ちいちゃな まずしいリンゴの木にも

忘れずに

美しいみのりをうながしに行くように――

 

(花神社「新川和江全詩集」中の「明日のりんご」より。)

 

 

炎暑でぐったりしていた

野の草に

秋風が初めて吹く頃――。

 

名もない草が

俄然、輪郭をくっきりさせて勢いづく。

 

詩人の眼差しは

風のやわらかさ(やさしさ)に向かい

それを

 

ほそい草を いっぽんいっぽん

ていねいにより分けて吹く

――と歌います。

 

 

この眼差し(観察眼)の繊細さに感心させられますが

風がわたしの心にも

くっきりと道をつけてくれる、と歌い継ぐところで

この詩は

単なる自然描写に終わらない領域に入ります。

 

風がつくったその道をたどって

心のさらに深い場所へ

はいって行こう

――とこの詩は呼びかけます。

 

わたしの心に向かって。

 

 

詩集タイトルは

この詩から生まれたようですね。

 

ちいちゃな

まずしいリンゴの木に

美しい実りがもたらされるように、と祈る詩(人)が呼びかけるのは

わたしです。

 

同時に

中学生ほどの若者たちです。

 

 

途中ですが

今回はここまで。

 

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