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2016年12月30日 (金)

中原中也が「四季」に寄せた詩/「青い瞳」の家

 

「四季」1935年(昭和10年)12月号に発表されたのが

「青い瞳」という2節構成の詩です。

 

この詩はやがて

「在りし日の歌」に収録されます。

 

 

青い瞳

 

1 夏の朝

 

かなしい心に夜(よ)が明けた、

  うれしい心に夜が明けた、

いいや、これはどうしたというのだ?

  さてもかなしい夜の明けだ!

 

青い瞳は動かなかった、

  世界はまだみな眠っていた、

そうして『その時』は過ぎつつあった、

  ああ、遐(とお)い遐いい話。

 

青い瞳は動かなかった、

  ――いまは動いているかもしれない……

青い瞳は動かなかった、

  いたいたしくて美しかった!

 

私はいまは此処(ここ)にいる、黄色い灯影(ほかげ)に。

  あれからどうなったのかしらない……

ああ、『あの時』はああして過ぎつつあった!

  碧(あお)い、噴き出す蒸気のように。

 

2 冬の朝

 

それからそれがどうなったのか……

それは僕には分らなかった

とにかく朝霧罩(あさぎりこ)めた飛行場から

機影はもう永遠に消え去っていた。

あとには残酷な砂礫(されき)だの、雑草だの

頬(ほお)を裂(き)るような寒さが残った。

――こんな残酷な空寞(くうばく)たる朝にも猶(なお)

人は人に笑顔を以(もっ)て対さねばならないとは

なんとも情(なさけ)ないことに思われるのだったが

それなのに其処(そこ)でもまた

笑いを沢山湛(たた)えた者ほど

優越を感じているのであった。

陽(ひ)は霧(きり)に光り、草葉(くさは)の霜(しも)は解け、

遠くの民家に鶏(とり)は鳴いたが、

霧も光も霜も鶏も

みんな人々の心には沁(し)まず、

人々は家に帰って食卓についた。

  (飛行場に残ったのは僕、

  バットの空箱(から)を蹴(け)ってみる)  

 
(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えました。編者。)
 

 

第2節に、

人々は家に帰って食卓についた。

――とあるのは

「郵便局」に、

彼等(かれら)の頭の中に各々(めいめい)の家の夕飯仕度(ゆうはんじたく)の有様(ありさま)が、知らず知らずに湧(わ)き出すであろうから。

――とあるのと響き合います。

 

 

第2節末行に飛行場が現われますが

ディオゲネスが現われる「秋日狂乱」が制作されたのも

この「青い瞳」と同じ頃のことと推定されています。

 

 

中途ですが

今回はここまで。

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