新川和江・抒情の源流/「ブック・エンド」の恋歌「冬のふらぐめんと」より
第1詩集「睡り椅子」の世界へ飛んでいく前に
2016年現在の新川和江の最新詩集「ブック・エンド」に
立ち寄ってみましょう。
「ブック・エンド」は
2013年に発行されました。
◇
詩誌や新聞などに発表された詩20篇が集められています。
巻末の初出一覧によれば
1999年の「空気入れ」を筆頭に
2006年の作が1篇
2007年の作が4篇
2008年の作が2篇
2009年の作が2篇
2010年の作が2篇
2011年の作が3篇
2012年の作が2篇
2013年の作が3篇(うち1篇は書きおろし)
――という内訳になります。
これら20篇が
3部に分けられて案内されていますが
分類の意図を詩人は明かしていません。
◇
いずれも香気あふれる絶品が揃い
詩世界に分け入っていると
時を忘れる境地に入りますが
今回は
2008年発表の作品「冬のふらぐめんと」の一部を
読んでみましょう。
「冬のふらぐめんと」は
現代詩手帖の2008年1月号に発表された
4篇で構成される作品です。
そのうちの一つ。
◇
陽射し
冬になると
地軸はこんな具合に
傾くのかしら
と上体を かしげてみる
陽射しが
居間の奥まで射しこんできて
ひとに坐って欲しかった椅子の
とうとう坐って貰えずじまいになった椅子の
猫脚の手前あたりで
ためらっている
(思潮社「ブック・エンド」より。)
◇
詩人は
色々な系統の詩を書いてきましたが
愛を歌う詩の流れは
枯れることがありません。
一人で苺を食べる
詩人の姿が重なってきます。
◇
途中ですが
今回はここまで。
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