新川和江・抒情の源流/詩人の来歴・その6/初の幼年・少年少女詩集「明日のりんご」まで
少年少女詩集「明日(あした)のりんご」が
発行されたのは1973年
詩人44歳になる年でした。
おや、と思えるような
遅めの発行です。
◇
「新川和江全詩集」の年譜を
めくってみましょう。
◇
新川和江は、戦後1年の1946年に結婚、
1948年に東京・渋谷に茨城県結城から移住以後、
同人誌「プレイアド」、文学グループ「十五日会」へ加わり
1953年には第1詩集「睡り椅子」を発表しました。
戦時下に師事した詩人西條八十に
励まされた時期です。
「睡り椅子」には
このような背景から
西條八十の序文があります。
◇
この年には新しい抒情詩を作ることを目指す「地球」グループに
秋谷豊に誘われて参加
ここを拠点に多くの詩人たちとの交流をはじめます。
同誌への発表のほかに
手塚治虫の「リボンの騎士」の脚色(1954)
朝日新聞へエッセイ「ちかごろの流行歌」を執筆(1957)するなど
活動領域を広げていきます。
1955年には
長男が誕生。
そして1959年、30歳で
第2詩集「絵本『永遠』」を地球社から発行しました。
◇
学研「中一コース」に連載した詩が
第9回小学館文学賞を受賞したのが1960年ですから
1955年の長男誕生から「絵本『永遠』」へと続く流れのなかで
少年少女詩篇の制作は活発化していきます。
少女雑誌、学習雑誌に
物語や詩を書きはじめたのは
東京へ移住した直後からでした。
一児の母親になったことは
詩人の詩作に深い影響を及ぼしました。
◇
「明日(あした)へのりんご」には
「中一コース」「中三コース」に連載した詩が大半で
「日本児童文学」「現代少年文学」「中学生文学」に載せた詩
ほかに詩人島岡晨との共著「われら中学生」中の作品も収録しています。
「中一コース」「中三コース」では
写真家、国枝健が全国を飛び回って撮った
若い世代の生活や表情に添えて
新川和江が詩を書き下しました。
詩集中、題名に地名が付せられてあるのは
写真家が巡った場所です。
若い世代のひとびとをモチーフにした詩を
まとめたのはこれが初めてと
詩人はあとがきに記していますが
テーマ別に作った詩集は
新川和江に数多(あまた)あります。
◇
途中ですが
今回はここまで。
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