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2016年12月31日 (土)

中原中也が「四季」に寄せた詩/「むなしさ」のわれ

 

「むなしさ」は

「四季」の1935年(昭和10年)3月号に発表されたのが初出。

 

「去年の雪」を詩集タイトル案としていた時には

冒頭に配置する予定でした。

 

詩集タイトルが「在りし日の歌」と最終決定した後

「含羞」が冒頭詩とされ

「むなしさ」は2番詩になりました。

 

 

むなしさ

 

臘祭(ろうさい)の夜の 巷(ちまた)に堕(お)ちて

 心臓はも 条網(じょうもう)に絡(から)み

脂(あぶら)ぎる 胸乳(むなぢ)も露(あら)わ

 よすがなき われは戯女(たわれめ)

 

せつなきに 泣きも得せずて

 この日頃 闇(やみ)を孕(はら)めり

遐(とお)き空 線条(せんじょう)に鳴る

 海峡岸 冬の暁風(ぎょうふう)

 

白薔薇(しろばら)の 造花の花弁(かべん)

  凍(い)てつきて 心もあらず

明けき日の 乙女の集(つど)い

 それらみな ふるのわが友

 

偏菱形(へんりょうけい)=聚接面(しゅうせつめん)そも

 胡弓(こきゅう)の音(ね) つづきてきこゆ

 

(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かなに変えました。編者。)

 

 

第3連、

明けき日の 乙女の集(つど)い

それらみな ふるのわが友

 ――とあるのは

新年の集いに参じた戯女たちは

みな古くからの友だちである、という意味ですが

強い口調で断言しているところに味わいがあります。

 

第1連で、

よすがなき われは戯女(たわれめ)

――と、これも体言止めで断定したわれは

戯女であるとともに

詩人自身ですから

詩人は戯女になりきって

この詩を歌っていることになります。

 

 

中也は「四季」にこの詩を寄せ

「四季」はこの詩を受け入れた

――ということを思うだけで緊迫してくるものがあります。

 

 

中途ですが

今回はここまで。

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